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彼が伸ばした腕は私の体ごとを捕まえて引き寄せた。
「それ……本当?」
「え」
「エリさん、僕のこと、好きって」
「……うん」
「ちゃんとお付き合いしたいって……本当?」
「うん」
熱っぽい体に抱きしめられながら素直に答えた。
「僕なんかでいいの?」
「え」
「僕はつまらない男だよ。人見知りで臆病で非力で引きこもりがちで……」
「よくそんなに悪いところばかり出て来るね」
「いつもそう思っていたから」
「……」
「こんな僕はエリさんみたいな華やかな女性には相応しくないって……ずっと思って来たから」
「……」
「でも、エリさんに恋愛感情がなくても、ただ一緒にいられるだけでも僕は幸せだと思っていたから……せめてエリさんの望む恋愛の邪魔にならないようにと──」
「祐樹さん」
「!」
耳元で囁かれている彼の言葉を遮り、そして胸に埋められていた顔を上げた。
「つまり祐樹さんは、私のことを好きだってこと?」
「うん」
「私と彼氏彼女としてちゃんと付き合ってくれるってことなの?」
「……はい」
熱のせいで少し赤らんでいる彼の笑顔を見た瞬間、今度は私から彼に抱きつき、そして頬にチュッとキスした。
「! エリさんっ」
「祐樹さん、好き……大好き……」
「……」
「もう私、祐樹さんしか欲しくない」
「……」
今まで気づかずに押し込めていた感情がここに来て一気に噴き出してしまった。
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