第一章 肉と魚

4/13
前へ
/41ページ
次へ
美佳と別れてフロアへ向かう途中の休憩室で見知った顔を見つけた。何かの書類を手に缶コーヒーを飲んでいるその人に声を掛けるために室内に入った。 「こんにちは」 「あら、島田さん。こんにちは」 声を掛けた彼女はエリア統括マネージャーの末永京(すえながみやこ)。社内では評判のヤリ手として男性社員に引けを取らない仕事ぶりで注目を浴びている女性(ひと)だった。 以前、内野宮係長とやり合っているのを見てから密かに注目していた。──というか (なんとなく同じ匂いがするんだよなぁ……) 噂によると末永さんは一生結婚しないと公言しているらしく、男に頼らない生き方を地で行っているとか何とか。 男とは程よい遊びで済ませているところとか、男に媚びない姿勢とか色々と話を訊きたいと思っていた。 そんな彼女とは郁美の結婚式で一緒になってから顔見知りになった。 彼女は郁美の旦那さんの真戸さんと同期で仲が良かったという縁で式に参加していたけれど、ほんの少し彼女の真戸さんに対する態度というか、雰囲気が気になっていた。 (まぁ、私や郁美の知らない何かがあったんだろうな) そう思っても敢えてそれを詮索しようとは思わないけれど。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加