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「もうそろそろかな…」  何時間も抱いて何回も出させて、俺も出す頃になってようやく警戒心の解けるこいつ。抱かれる側をネコと言うらしいが、俺を見るなり毛を逆立てる様子はまさに猫。あと、たまにすり寄ってくるところも。 「そろ、そろ…?」  そんな蕩けた顔するなよ。かわいいだけなんだから。 「こっからが本番だろ?」  髪を梳いて生え際に口づける。それだけで声を上げるんだから、これでこれから女抱くほうが無理だろ。  なあ、無理だって言えよ。 「ほん、ばん?」  出しすぎてIQ下がってるんだろうなって容易に想像のつく紅潮した蕩け顔。そういう俺もニヤついているのだろう。自分の頬を触ってみれば、口角の上げすぎで酷使された表情筋がヒクついていた。普段こんなに笑うことなんてないから。  でも、これからが本番なのは本当だ。これまでの三時間? そんなものは俺にとってはただの前戯。前戯で出すなんて恥ずかしいんだろうけど、それはまた別問題として。  だってこれからが。 「茅草、どうしてほしい?」  中から揺さぶりながら耳の中へ直接囁けば、かわいらしい悲鳴と嬌声がデュエットを奏でた。カラオケのカップルデュエットはイタイだけなのに、こっちは何時間でも聴いていられる。聴いていたい。 「ど、どう…?」  長身の男が小動物に見えるなんておかしいとは自分でもわかっているが、そう見えるものは仕方がない。 「どこを、どんなふうに触ってほしい? 茅草の言う通りに動いてやるよ」 「な、なんで?」 「は?」  いつもなら恥ずかしがりつつおねだりしてくるのに、今日は違った。 「なんで、こんなことするんだ…」  泣き言のように、しかし心のどこかであるひと言を求めているかのように、茅草は真っ赤になって射精をこらえながら見上げてくる。だから俺はその期待に応えてやる。 「好きだから」 「嘘、つけ…」  真っ赤な顔を背けられる。それで隠せているつもりか? 「嘘つきは茅草だろ。ほら、どうしてほしい? もっと奥を突いてほしい? それとも…」  覆いかぶさって、わざと耳元で囁いた。 「付き合ってほしい?」 「なっ! はあ? ち、違えし!」  焦って否定する茅草は、照れ笑いと同じ顔をしていた。  なあ、もうこれは俺の思い込みじゃないだろ? 「俺は茅草が動いてほしいように動くよ。恋人として動けっていうなら、そういうふうに行動する」  あともう一押し、足りない。早すぎた。まだ茅草の理性が少し残っていたのに。  こうやって後悔するのに、俺はどうして毎回口説いてしまうのだろう。答えは決まっている。 「恋人……。なら、さっさと動けよ」 「え…?」  いつもなら否定する言葉が返ってくるのに、今日は違った。
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