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第二章・秋冬 1ー③
湊は一人で過ごす気にならなくて、湊は真悟に連絡を取った。
カフェバーで待ち合わせして、飲む約束をする。
携帯を見ると何件もの着信があったが、それをかけ直す事なく電源を切った。
「湊~!お待たせ~!どうした?突然!」
「今日はアッシュの恋人が来てるからさ。追い出されちゃって」
店員に飲み物と、何点かの料理を頼んだ。
「追い出されたって、どういう事だよ?」
「アッシュの前から付き合ってる彼女が来てさ。お邪魔だから出て来たんだけど、メシもまだだし」
真悟はそれを聞いて。黙り込んでしまった。
「あのさ、湊。俺、知ってんだよ」
「何が?」
「お前、ちょっと前から変わったよ。多分、それってアッシュと付き合ってるからじゃねぇの?」
湊はビールを吹きそうになり、思わず咳き込んだ。
「俺はずっと湊を好きだったからさ。悔しかったんだよ。でも、お前、幸せそうだったからさ、それなら良いかと思ってたよ」
「真悟……」
「でもよ。俺が身を切る思いで諦めたのによ。何だよアイツ!前の恋人とヨリ戻すとかさ!許せねぇんだけど!」
「真悟もさ、あの恋人見たら身を引くしかないって思うの、分かると思うよ。すんごい美女なんだよ。アッシュは本当はノンケだからさ。俺は代用品だったんだと思う」
正しくは、代用品の代用品だ。
エリカの話はほとんど聞いた事は無かったが、アッシュが主人の妻を語る時の真剣さは、この上もない敬愛に満ちていた。
「もう、良いんだよ。最近はほとんど会えてなかったし。そもそも身分違いも甚だしかったんだから。その内、ヴァリューカに帰っちゃうんだから、覚悟はしておかないといけなかったんだし」
「何だよ!そんなの湊が惨めじゃねぇかよ!」
真悟が自分の代わりに怒ってくれるのが嬉しかった。
湊はアッシュに溺れ過ぎて、冷静になれていなかった。
あれだけ、別れを覚悟していた筈なのに。
「湊、もうさ、俺にしとけよ。俺、お前を大事にするぞ?」
「ゴメン……。真悟を責める訳じゃ無いんだけど、二股とかセフレとか、俺、本当にダメなんだよ」
「俺はお前が付き合ってくれるなら、他のは全部、切るぞ?」
「お前は友達だよ。大事な。だから、付き合うとか、そういう事は出来ない」
湊はビールを煽るように飲んだ。
グダグダになるまで飲んで、潰れてしまいたかった。
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