夢桜風

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「逃げたな。まーでも、新学期になるころには咲くだろう。振られる姿を見られるのは楽しみだ」  条件を付けた彼女の言葉に僕もイヤミをつけて話すけど、言葉を聞いた彼女は「あの桜じゃないよ」と二人で眺めてる桜を指さす。だから僕は彼女のことを見る。  その時の彼女は普段の印象と違っていた。どうしてかその時に僕は息が苦しくなったのは一瞬のことで「じゃあ、どの桜なんだよ!」と返すと彼女は笑って「教えなーい」とまた笑顔に戻っている。  もう彼女の笑顔にも慣れてしまった。今更その笑顔がなくなってしまったら調子が悪くなる。  日々はどんどん進むのに、暖かさはまだ桜の季節までは届かない。人々が「暖かくなった」とは言うが、それは冬の寒さがなくなっただけで、桜の季節とは言えない。そんな日々が続いて、僕の桜と彼女の言う桜のどちらもまだ咲かないのだろう。  学校が休みになってあの笑顔とも離れられる。学校の友人は多くなく、寮では休みの間に家に帰る人間が多いのだが、僕は親と不仲なので残っている。こうなると暇という魔物が取り付いた。
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