ゴーヤ

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ゴーヤ

「あっ、また伸びてるわ! すごいわね〜ほんとに。ねぇあなたー、 ちょっとこれみてー。」 さちこはベランダでゴーヤを育てている。 育て始めて一ヶ月。収穫した回数はとうに4回は超えていた。 「また伸びたのか? どれどれ。おぉ!ほんとだ。 このへんはやっぱり水がいいのかなぁ。」 さちこの夫マナブがのんきに言った。 さちことマナブはこの、ど田舎に越してきて2ヶ月が経っていたがいまいち土地の人間に馴染めていなかった。 地区の集まりに参加してもどこか皆よそよそしいのだ。 「これ誰からもらったんだっけー?」 マナブがゴーヤの四方に伸びた蔦を触りながらさちこに聞いた。 「お向かいの山田さんよ。 普段挨拶しても無視するのに苗を急にくれたのよー。 山田さんの奥さんって歳は私と近そうだけどあまり目も合わせないしちょっと変わってるわよねー。 なんかビクビクしてるっていうか。 旦那さんはチラッとしか見たことないけどこれまた無愛想だし。」 「さちこーまたお前の悪いとこ出てるぞー。すぐ憶測で物や人を判断したりしてー。あと妄想もひどいしなー」 「ふん、あなたよりマシよ。 あ、そうだ! 近所にハイキングによさげな小山を 見つけちゃったの。 それでー、お向かいのご夫婦も駄目元で誘ってみない? 交流もかねて。 ゴーヤのお礼にわたしお弁当作りますって言うわ。」 「ふむ、たまにはそういうのもいいんじゃないか? せっかくこんな自然のどかな田舎に越したんだし交流がないのも寂しいもんな。よし、俺が声かけてくるよ。」 そういってマナブは玄関に向かった。 「じゃぁ、ちょっと行ってくるよ。」 「うん。上手に誘ってね!楽しみにしてますって伝えて。 いってらっしゃい♪」
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