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じめじめとした時期が続く六月。
そんな中途半端な時に転校生が一人、私のクラスにやってくる。
クラスの皆は男子、女子どっちなのかを知りたくてウズウズしている。
他のクラスの人たちもこぞって誰だ誰だと見に来る。
それほど【転校生が来る】というイベントは男女関係なく、熱くなる。
かくいう私も少しばかりウキウキしていた。
クラスではあまり馴染めていない陰キャだが、転校生が来ることによって自分にも何かイベントが起きるのではないかと少女漫画脳になっているからだ。
それは何故かというと、私の隣の席には席が一つ空いている。
これはまさに転校生がここに座るという大フラグ。
なので、夢見てしまう。
数多の少女漫画を読んできたのだから。
もし、転校生が女子ならば。
席が近いことを理由に教科書を見せたり、お昼ご飯を一緒に食べたり、下校したり、パンケーキとか食べに行ったり──。
そんな友人……いや、もしかしたら親友かもしれないポジションになれば良いなと考える。
反対に。
もし、転校生が男子ならば。
これまた席が近いことを理由に超激アツな恋愛展開が待っていたり、待っていなかったり──。
そして顔面は誰でも振り返るような超絶イケメンであれば、もっと良いのにな……なんてただの妄想を広げてしまう。
……まぁ、陰キャな私にそんな漫画みたいな展開が待っているはずがないのにね。
多分きっと。
少女漫画を読みすぎたせいで恋愛を含め、友人が欲しいと飢えているからだろう。
私も四月にこの学校に転入したばかり。
最初の頃は、案の定、チヤホヤされたけど緊張しいの私は、上手く言葉を返せなく、そこから友人と呼べる人は作れなかった。
今ではもうだいぶ慣れたので緊張することはないのに、既に出来上がっている輪に入るのは正直難しい。
だから今回の転校生が来るイベントは私にとって一大事なのだ。
恋愛は無理であっても、転校生という同じ仲間である友人が作れるかもしれないから。
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