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ガラガラ
「おーい、席に着けー、廊下にいるお前らも自分たちのクラスに戻れー」
先生が教室に入ることで私含め、クラスの皆は一気に緊張感が走る。
「みんな、おはよう。みんな知っていると思うが、このクラスに転校生が一人加わることになった。それじゃ、入ってきなさい」
ガラガラ
「………初めまして。空野 星凪です」
男子だった。
それは普通の男子ではない。
風邪を引いているのか分からないが、マスクをしていた。
しかし、マスク越しでも分かるイケメン度合い。
名前を名乗った瞬間、クラスの女子たちは黄色の歓声を浴びせた。
ここはライブ会場か!ってツッコみたくなったが、私もほんの少しドキッとしたので何も言えない。
「空野くんは家庭の事情で転校してきたみたいだから、みんな仲良くするようにー」
「はい!!!!」
「それと席だが………」
きた。この瞬間。
「園崎の隣が空いているからそこに座ってくれ」
「はい、分かりました」
席に着く瞬間までどれほどの女子が彼の美貌に目を釘付けていたんだろう。
どの女子も目がハートになっていた。恐らくだけど。
席に着くなり、彼は小声で「よろしくね」と言う。
私も小声で「よろしく」と返す。
隣の席というパワーチャンス。
漫画的展開、もしくはそうなりそうな展開が来るのかと今か今かと期待していた。
***
そんなことはなかった。
現実はそこまで甘くない。
転校生の彼は、コミュ力が高いのか女子はもちろん、男子まで人気を集めていた。
最初は『イケメンはずるいよな、女子選び放題で』みたいな卑屈な言葉を放していた男子たちもあれやこれやで彼の虜に。
それがクラスだけでなく、他のクラスまで友人が出来るほどに。
私の付け入れる瞬間なんてない。
同じ転校生とはいえ、格が違う。
私みたいな陰キャと彼みたいな陽キャには。
元から仲良くなる、漫画的な瞬間というのははなから訪れていなかったのだ。
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