根元には

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根元には

  「ようやくあなたも一人前の色がついたわね」  真っ白だった花に徐々に薄い紅色が滲み、隣に立つ姉桜から褒められた。 「御姉様のおかげです。人間の男を堕とすには”さしすせそ”がカギだって教えてくれたから、彼との会話でずっと実践しました。彼、とっても喜んでくれたんですよ」 「フフフ。上手に使ったのね。ま、あの男の場合、それ以前にあなたの美貌に一目惚れのようだったけれども」 「人の営みは面白おかしかったです」 「私の花もここ数年色褪せてきたから、そろそろ次の狩りに行こうかしら」  人里離れた山奥の桜の群生地。  下草を退けてよくよく調べれば、それらの木の根に絡み絡まれ埋もれた人の骸が次々と発見されるだろう。  ひときわ色鮮やかな小さめの木の枝には、ダイヤの指輪がカッチリとはまっている。  誰から聞いたか出どころのわからない情報を元に、桜を探して見に行くのはおすすめしない。  了
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