昔の男

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「相変わらず口が悪いなぁさちこは。」 私もそれは思っていた。 こんなに他人に躊躇なくものを言ったのはいつぶりだろう。 昔は頭で思ったことをなんでもずばずば言っていたタイプの人間だった気がする。 とくにヨシオの前では。 それが大人になるにつれ、職場、ママ友、義理の実家、旦那にまでも言いたいことをはっきり言うのをやめている自分がいた。 なぁなぁで何十年も生きてきてしまった。 世を渡る処世術であったとしてもやはりどこか生きづらさを感じた。 いつの間にか守りの姿勢が当たり前になってしまってそんな性格がやがて元の性格を排除し、自己主張のない今の自分が形成されてしまっていた。 ヨシオと話して昔の自分のことを思い出してきた。 「それで~?」 ヨシオはあくびをして伸びをしながら聞いてきた。 なんか向こうだけ余裕でムカつくわね… アイツにとっちゃあたしなんて通りすがりの昔の知り合いってとこなんでしょうよ。 腹がたった。 「なにがよ…?」 「“くたびれたじじぃ”に何か用か? わざわざ探しにきてまで。」 「はぁ? 別に用なんて…ていうか探してなんかないわよ! 偶然会っただけよ… あなた勘違いしてない?」 「ふーん」 そういってヨシオは上から下までよしこを眺めて 「お前、いま暇か?」 と急に顔を覗きこんだ姿勢で聞いてきたので少し鼓動が早くなる 「い、忙しい…いま珈琲飲んでる。」 「もう空だろ。ちょっとついてこいよ」
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