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「お花見」は変だ。あれは花見ではない。花がないのに花見だって言うのはおかしい。どこに花があるというんだ。
新緑の葉を眺めながら、宴会をしているのが「お花見」だ。まぶしすぎる日差しが、生えてきたばかりの葉にさえぎられて、気持ちがいい。外にいるのも心地がよくて「お花見」と呼ばれるこれが好きだ。しかし、そう呼ぶのは変だと思う。ただ、それを指摘するような人の話は聞いたことがない。
あれを「お花見」と言うのは昔の名残らしい。みんなが眺める桜と言う植物は、三月から四月にかけて花を咲かせていたらしい。ひいおばあちゃんが小さいころに二回だけ花を咲かせているのを見たという。その時は、「緑色の葉の隙間から数輪のピンク色の桜の木が咲いていた」と言っていた。
桜が咲かなくなったとしても、なかなか「お花見」と言う文化を捨てられなかった。桜が再び花を咲かせてくれるという希望を捨てられなかった。だから、花が咲かなくなっても、桜の木の下に集まって宴会をする。
桜が花を咲かさなくなってしまった原因は、学者によって意見が分かれている。中でも有力とされている説が二つある。一つは、気候が変わって桜が花を咲かす気温よりも高くなってしまったから。もう一つは、花を咲かすことがなくても人が遺伝子操作をするためより強い遺伝子を持つ子孫を残せるようになったから。
桜が咲かなくなってしまった原因なんてどうでもいい。ただ、昔の人が眺めていた花がある「お花見」をしたい。桜が満開だったころの映像や写真、絵画も残っている。リアルでなければ、満開になった桜の木の下で「お花見」をしたことはある。けれど、それは空想の世界のことのようで実感が湧かない。
そんな中、一人の研究者が、四月に花を咲かす桜を生み出すことに成功したと発表した。ああ、これで桜の花がある「お花見」ができる。
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