式浪との遭遇

6/6
43人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
 「えっと、聞きたい事だっけ?」  「そうだ。」 式浪はこくりと頷き、僕を見つめた。  「姫宮の誕生日が近いらしいな。 …なにを、あげたら喜ぶと思う? 俺の誕生日の時に用意してくれたから、返さないわけにもいかない。 あんたは姫宮と友達だから、わかると思ってな…。」 目をそらしつつ、だが姫宮くんの事を口走った時の式浪は微かに照れていた。 僕は驚く。 姫宮くんと式浪は思ってる以上に進んでいて、お互いを大切に思っている。  胸が酷く痛いけど、不思議と、式浪と姫宮くんなら仕方ない。 そう思わせる魔性が、この男にはあった。  「姫宮くんの好みなら、わかるよ。 ネットで買うんだよね?色々、教えてあげられるかも。」  「助かる。平野、あんたは良い奴だな。」  「…僕は良い奴なんかじゃないよ。本当に良い奴なのは式浪みたいな人の事だと思う。」 別に、二人が上手く行って欲しいからではない。 姫宮くんに喜んで欲しいから、式浪に姫宮くんへの贈り物の提案をするだけだ。    「これで誕生日までには届くはずだ。 本当に、どう礼を言ったら良いのかわからない。」  「気にしないで。」 僕も所詮、全部自分のためでしかないのだから。
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!