新説ヘンゼルとグレーテル

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「さぁ、着いたぞ。此処がお前達の死に場所だ」 お菓子の家に到着したリーダーは、そう告げながら、何もない空間から大きな鎌を取り出して見せる。 すると、震えながらグレーテルがこう言った。 「恐れながら魔女様。どうせ殺されるなら、私達は、毎日美味しいご飯を作り出してくれた私達の命の源……この竈で焼かれたく思います」 「なに?竈で焼かれたいだって?我儘な娘だね。仕方ない」 グレーテルの哀願にやや不機嫌な声を出すも、リーダーは2人を抱えて竈に近寄っていく。 そうして、グレーテルに竈に火を起こす様に命じたのだがーーこれが全く上手くいかないのだ。 「全く、なんてグズな子だろう。だから、人間は嫌なんだ。何も出来ないくせに。ほら、どいてごらん」 リーダーがそう言って、竈に火を起こそうと、身を乗り出したーーその直後、グレーテルが魔法で大きな火を起こす。 「ぎゃぁぁぁ?!!熱い熱い!」 顔を火に焼かれ、悲鳴をあげるリーダー。 その瞬間、兄妹が全力でリーダーを竈の中へと突き飛ばした。 同時に、ヘンゼルが物を動かす魔法で竈の扉を思い切り閉めた。 「開けておくれ!開けておくれよ!!」 竈の中から耳を塞ぎたくなる様なリーダーの悲鳴が聞こえて来る。 けれど、ヘンゼルとグレーテルの兄妹が竈を開けることは無かった。 「貴女が人間を嫌いになる理由はあったのかもしれません。でも、私達にとっては、貴女のどんな理由より、お姉さん達の方が大切なのです」 「恨むのなら恨んで下さい。それでも、僕達はお姉さん達を殺させるわけにはいかないのです」 ぎゅっと手を繋ぎ合い、竈を見つめるヘンゼルとグレーテル。 リーダーが焼かれ、魔力が弱まったのかーー拘束が解けた私と姉は、私達を助けてくれた幼い兄妹をぎゅっと抱き締めた。
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