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相川恵理子さんは、あの主婦ぽっい人だった。
グレーのニットと黒のパンツスタイル。特徴らしいものはないのが特徴、みたいな。
いきなり名指しをされ、明らかに動揺していた様子で、少年に起立を促され。
オロオロした様子で周囲を見ながらその場に立った。
しかし少年はさして気にする様子もなく。
「今から十分。お願いします。スタート」
と、いきなり開始した。
相川さんはまごまごしながら。
「えっと、私の名前はあ、相田エリです。年齢は十三です。えっーと、結婚はしてません。子供も居ません。えっと、その」
「もっとスムーズに話して下さい。時間稼ぎと思われるような喋り方はやめて下さい」
少年のぴしゃりとした声に、相川さんはびくりと体を震わせた。
「は、はいっ。出身はハワイで男子校に通っていて……」
その後も、相川さんの半生とも思われることをベースにしたと思われる嘘を、辿々しく喋り続けたが。
少年が五分と言う前に、相川さんの言葉は尽きてしまい。
相川さんが「すみません、もう喋れません」と項垂れた。
「はい。分かりました。では、お気をつけてお帰り下さい」
「はい……」
相川さんはそのまま、背中を丸めながら会議室を出て行った。
(こ、これは結構キツイ! まず、一人でベラベラと十分喋るって結構難しい。しかもそれは嘘を言わなくてはいけない!)
何にも考えずに、対策なんかせずに来てしまったのを今更後悔したのだった。
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