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普段大人しい奴ほど切れるとあれ
盗んだ金に手を付けた。盗んだ金、否これはもう俺の金である。そりゃ最初は違ったかもしれないが貰ったからな。全て俺の金だ。俺はこの金を遣う権利がある。
まず家族の服をたくさん買った。日持ちする菓子や食料も買って金と一緒に届けようと思った。そういえば欲しい本があったんだった。高くて手が出せなかったが今の俺にとっては端金である。持って歩けない程大量に書物を買い込みヨロけながら帰路に着いた。明日は眼鏡も新調しよう。毎日外食も出来るな。そうして家で一人きりになると瞼に浮かぶ昨日の記憶。
「……殺す!アイツ!!クソ!クソ!!クソッ!!!」
俺は突如切れて買ったばかりの本を壁に向かって投げつけた。良い子はこんな事をしてはいけません。
俺は昨日、あのクソにしこたま酒を飲まされて……。店で漏らせと言われた時は本当に舌を噛んで死のうかと思ったが、問題は店から出た後だ。尿意というのは一度解放した後も断続的に襲ってくるもんだと思う。事実俺は安宿に連れ込まれ尻に奴のイチモツ捻じ込まれ抜かずの三発という拷問を受け半死半生になったところで二度目の尿意を催したわけだ。飲み屋では免れた、でも宿ではそうはいかなかった。
尻にチンコを突っ込まれたまま押し問答の末、なんとかベッドから這い出し、でもまた捕まって。結局トイレに間に合わず、奴の前で……。
『見んでッ、嫌だ!お前がッ……、お前のせいやん、!見んなっちゃ!こっち来んな!!』
泣きながら漏らす俺を眺めながら、一服でもするかとおもむろに煙草を咥えたクソ野郎の姿を見て頭の中で何かが切れる音がした。
俺は下半身を小便で濡らしたままナイトテーブルに置かれた灰皿を掴んで男に向かってぶん投げた。意外にも奴は避けなかったが俺がノーコンだったせいで命中しなかった。でも掠りはしたようであいつの頬がスパっと切れて血が流れた。
『こんクソッタレ!!お前なんか魔獣にチンコ食われて不能になったらええんじゃ!!!』
そう吐き捨てて、俺はバスルームに置いてあったローブを羽織りその格好のまま部屋から飛び出した。奴は追っては来なかった。流石に引いたのだろう。俺も自分自身でドン引きだ。
……殺したい。
あの男にはもう二度と会わないと思う。大体、相手何てよりどりみどりのくせに何故俺のような地味な男と性行為に及ぼうなどと思ったのだろうか。牧場の雌ヤギにでも突っ込んどれハゲ。いや、それは雌ヤギに申し訳ないな。
兎に角俺が泣きながら漏らした事で縁は切れた。はずだ。あとはあいつさえ言い触らさなければ。いや、そこは心配してない。血迷って文官の地味男にチンコを突っ込んだなどあいつにとっても忘れたい出来事だろう。というか忘れろ。ついでに金のこともな。ま、今更返せと言われても絶対返さんが。
俺はガリガリと爪を噛みながら、この数日で受けたストレスを何とか昇華しようとしていた。いやもう全然無理だが。
◇◇◇
存外長い睫毛から涙の雫が散るのを見てゴクリと喉が鳴った。泣きながら蹲り、床を濡らすテディの痴態を見て下半身に急速に熱が集まる。誤魔化すように煙草を咥えれば、鮮やかなシアンの瞳に苛烈な炎が灯った。それを見てもうダメだと思った。灰皿は避けなかったんじゃなく、避ける事が出来なかったのだ。まさかこの俺が見惚れていたなど。
極め付けに、魔獣にチンコ食われて不能になれ、だ。あの悲鳴のような罵倒を思い出すだけでゾクゾクとした興奮に襲われ、切れた頬がずくりと疼いた。
「ヴォンガルド隊長、その怪我はどうされたんですか?」
朝から上機嫌な俺に怯えながら部下が尋ねてきたので俺はうっそりと口角を吊り上げた。あの後直ぐ追いかけて興奮のままヤリ潰しても良かったが、少しだけ泳がせることにした。
次会ったらあいつは俺に何て謝罪するだろうか。
想像するだけで面白い。考えてたら我慢出来なくなってきた。
紫煙を燻らせながら無言でニタつく俺に話し掛けてくる勇気のある奴はもういなかった。
結論から言えばテディは俺に謝罪しなかった。
それどころか俺の姿を目にした瞬間、今度は手に持っていた羽ペンを投げつけて来たのだ。
「オマエ!どのツラ下げてここまで来たんじゃクソ!!」
こいつ、こんなに口が悪かったのか。目を血走らせて激昂するテディの姿を見て俺の背に再びゾクゾクとした痺れが駆け上がる。はー、本当に面白ェ。戦場でドラゴンと対峙した時だってここまでの高揚はなかった。
「ンな怒んなよ、思い出すだろ?」
「きっしょいんじゃボケ触んなや!!!何ッも思い出さんちゃ!!!」
テディの全力の抵抗など俺にとっちゃ何の意味もない。片手で両手首を拘束し、股の間に脚をねじ込むだけで全然動けなくなるのでちょろいもんである。
「お前が部屋を汚すから宿泊代倍取られたんだぜ?」
「ッッッ!!!!」
耳元でそう囁いてやればテディは顔を真っ赤にさせて唇を戦慄かせた。あーヤベ、勃った勃った。バッキバキだわ。
「今日は酷いことしねーから機嫌直せよ」
硬くなった下半身をゴリゴリとテディの腰に押し付ければ、ただでさえ吊り上がっていたテディの眉が更に鋭くなった。最早噴火寸前である。その刹那、
「あれ!二人ってそんなに仲良かったんですか?!てかどういう状況?!」
突如現れ、果敢にも声を掛けてきたメイソン青年。
ここからのテディがまた見ものだった。
さっきまであんなに激昂していたのに同僚を前にした途端、「ヴォンガルド隊長が立ち眩みがするとよろけられたので咄嗟に支えただけだ。隊長、大丈夫ですか?」と、突如普通の人間の皮を被ったのだ。
いやいやいやいや。そんなんお前さ、逆効果だろ。お前のその行動が俺をどんだけ興奮させるかわかってやってんのか?
腹を抱えて笑い出しそうになったが、俺は一先ずテディに乗ってやることにした。
因みに俺は生まれてこのかた立ち眩みなんぞ経験したことがないのだが、メイソン・ブロディは素直に信じたらしい。
「え!!大丈夫ですか?!医務室にお連れした方がいいんじゃ?!」
「そうだな、俺も同じ意見だ。だけど俺は今から外せない用事があって付き添えないんだ。すまんがメイソン、隊長を医務室へ送ってやってくれ」
「えーーー!!!俺が隊長殿を!!!」
何を企んでいるかと思えば、あろうことか俺様をこの場から雑に追い払おうとしている。
こいつもうあれだろ、お仕置き待ちだろ。
「いや、医務室に行く程ではないから大丈夫だ。俺もこれから会議があるから、ここで」
離れる際に薄い尻を撫で回してやればテディの肩がビクリと震えた。
「ヴォンガルド隊長!お身体ご自愛くださいね!」
メイソン・ブロディの声にひらりと手を振り踵を返す。歩き出した俺の頭の中は既に次はどんな方法でテディ・ヒルを蹂躙してやろうかとそんなことでいっぱいになっていた。
「そうだ、花街で変な張り型を買い込んで全て試してやろう。でもあいつ暴れっからなァ、拘束具も買ってやるか」
魔獣討伐の報奨金と引き換えに手に入れた玩具は予想以上に俺を愉しませてくれる。俺は昨夜の玩具の痴態を思い浮かべながら、これからの楽しい予定に心を踊らせたのだった。
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