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僕の高嶺の花①
自分には高望みだったんだ
あんな誰もが見惚れるような可憐な花に恋をするなんて
どれだけ恋焦がれても努力してもあなたには届かない
それならもう忘れてしまおう
そう心に決めた
だけどあの日から、どこか毎日が色褪せている
* * *
「ちょっ、大河こぼれてる!」
「あ...ほんとだ」
「もお...ほんとだ、じゃねぇよ」
呆れた声を出しながらも目の前の猫目で綺麗な顔の青木遼は、隣に座る甘く整った誰もが振り向く美貌の持ち主神崎大河が服にこぼしたものを拭いてあげる。
その手つきは言葉とは裏腹にとても丁寧で優しかった。
そんな遼に大河がとろけるような笑顔で優しく微笑む。
「遼、ありがとう」
「っ...別にこのぐらいどうってことないし」
その笑顔に遼は絵に描いたように赤くなった。その反応に嬉しそうにまた大河が笑みを浮かべる。
二人はうっとりと見つめ合うとふふふと微笑みあった。
「お前ら......こんなとこでイチャつくなよ」
呆れ顔で見つめながら、二人の友人である佐々木宰はため息を吐く。
「な!」
宰の声に遼はハッとしたようにこちらを向いた。
「いちゃついてなんかないし!」
「何言ってんだよ、ほっておいたら今にもキスしそうな雰囲気醸し出しといて」
「出してないわ!」
宰のからかいに遼は期待通りの反応を返してくれる。そんな遼を大河は相変わらずにこにこと見つめていた。
「佐々木、遼が可愛いからってからかっちゃダメだよ」
「可愛っ!」
可愛いという言葉に遼が敏感に反応する、その頬がぽわんと赤く染まった。
「遼...赤くなった、可愛い食べたい」
「食べたいってなんだよ...」
あれよあれよという間に色白の肌が首筋まで赤くなる。遼の反応にますます大河は瞳を細めた。
「神崎、可愛いからってからかってるのは俺じゃなくてお前だろ」
遼を見ながらあまりにも嬉しそうな顔をする大河に、宰はハァとため息を吐いた。
「だって可愛いから」
悪びれもせずにっこりと大河が笑う。その横で遼は全然収まりそうにない赤い頬の熱を、少しでも覚まそうと手で扇いでいた。
(ほんと毎日毎日飽きもせず......)
目の前で繰り広げられる、大河と遼のやりとりに宰は心の中で呟く。
二人のバカップルぶりは有名だった。もともと大河が超絶イケメンとして大学内外で名を馳せていたのも相まり、今や校内で知らない人はいない程の名物カップルになっていた。そしてラブラブな二人がお似合いで可愛い!や癒される!など女子たちから大人気で、すっかり二人は周りから温かく見守られるようになっていた。
二人が付き合うまでの全部を見届け、さりげなくサポートした身としては、仲がいいのは微笑ましいことだ。だけどこうも毎日のように、目の前でラブラブオーラを出されるとはさすがに思っていなかった。
「じゃあ俺はそろそろ行こうかな」
宰は食べ終わった食器を乗せたトレーを手に取る。
「まだ昼休みあるじゃん」
「少しでも二人にしてやろうっていう俺の優しさだよ」
「ちょ.....」
止めようとする遼に向かってヒラヒラと手を振る。
「遼お言葉に甘えよう。ありがとう佐々木」
「......はーい」
大河が優しい顔をして宰に微笑む。なまじ顔がいい分、うっかりすると遼じゃなくても見惚れそうになるその顔面の迫力に押されながら、宰は大河に返事を返した。
「じゃっ遼、あとで」
「さっ、佐々木......ありがと」
ぶっきらぼうに、だけど小さい声でそう言う遼に宰は吹き出した。
(素直なんだか、素直じゃないんだか)
そのまま笑いながら宰はその場を後にした。
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