僕の高嶺の花⑥

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二人の唇が重なる。 唇を舐めると、何の迷いもなく天音が口を開く。深く舌を差し入れ、くすぐるように顎の上をなぞると、天音が体を跳ねさせて宰の背中に腕を回した。ギュッと抱きつく天音を支えながら、その体をソファに押し倒す。角度を変えてもっと深く口付けると、舌を強く吸った。 「ん、んぅ......ふ......」 鼻にかかった天音の甘い声に、劣情が煽られる。必死に宰のキスに答えてくれる天音が可愛くて、もっと欲しいという気持ちが止められなくなる。頭の下に掌を置いて支えながら、天音の体に覆いかぶさる。すると下半身に天音の昂ぶりが触れて、それに宰は反応している自身をそっと擦り合わせた。 「あ、んっ......」 腰を跳ねさせて、重なった唇の間から甘い声が漏れる。キスを解いて、抑えきれない欲情に濡れた瞳で天音を見つめると、その視線だけで感じるのか天音がフルっと震えて口を押えた。 「あ......」 擦りつけられる宰の昂ぶりに、目の下を赤く染めて、宰の下半身に天音が視線を向ける。 「佐々木くんの......固くなってる......」 手を口に当てて恥ずかしそうに口にする天音。頬を染めながらも、どこか期待するようにそこを見つめる天音に、さらに熱が煽られた。 グッと強く、触れあったそこを押し付ける。 「先生のも、固くなってるね......」 「だって......」 自分の状態を指摘されて、天音が瞳を潤ませる。安田に媚薬を盛られたのだ、体の反応が過敏になっているんだろう。そう宰が思っていると、天音がギュッと覆いかぶさる宰の服を掴んだ。 「佐々木くんがキスしてくれるなんて夢みたいで......」 「え......」 「佐々木くんに触られてるから......触れられるだけで......きもちいい」 ぽうっと瞳を蕩けさせ、うっとりと宰を見つめる。 (媚薬じゃなくて、俺が触れてるから......) 「っ......先生」 堪らなくなって宰は噛みつくように天音にキスをした。すぐに腕を首に回して、天音が答えてくれる。 「はぁっ...ん......」 激しいキスに息が上がる天音の様子に唇を離して、宰は額に頬に顔中にキスを降らせた。 「もっと触れていい? 先生の奥まで全部......」 「あんっ......」 耳元で囁くと、天音の口から大きな嬌声が漏れた。恥ずかしそうに口を抑える天音が可愛くて宰は微笑む。目の前にある宰の微笑みに、天音は赤く染まりながら、宰の言葉にうんと頷いた。 「もっと触れて? 佐々木くんにいっぱい触って欲しい......僕のぜんぶ...あげる......」 熱を孕んだ天音の瞳、宰を求めるその言葉に、宰は大きく息を飲んだ。 「先生っ......」 宰は天音の首筋に顔を埋める。白い肌を舐めて甘噛む、そして強く肌を吸った。 「あ......ささきくっ」 赤く染まった宰の所有の証に、満足するように目を細める。そのまま宰は天音の服の裾に手を忍ばせると、脱がせるように上に上げた。 「っ...待って!」 「.........」 待って、という天音の言葉に、宰はビクッとして動きを止める。 (俺......やりすぎた?) さすがにキスマークを付けるなど、調子に乗りすぎたかもしれない。宰は怯えるように体を離す。 「ご......」 「あの......このソファー背もたれ倒せるから」 「え?」 謝ろうとする宰より早く、天音が口を開いた。体を起こした宰を追いかけるように、天音も起き上がる。その体を手で支えて、宰は首を傾げる。 すると天音が恥ずかしそうに視線を伏せると、ソファーの背もたれに触れた。 「これベットになるんだ。たまに本を読むのに集中しすぎて終電を逃しちゃうことがあって、研究室に泊まれるように買ったんだけど......」 あの、だから、その......と言い淀む天音に、宰は理性が切れる音を聞いた。 「ちょっと待っててね」 天音の体を支えて立ち上がると、宰はソファーの背もたれを倒した。そしてその体を抱えあげて、そっとベットになったソファーの上に押し倒す。 「佐々木く、ん......」 赤く染まる天音の前で、宰は着ていたトップスを脱ぎ捨てる。現れた宰の裸体に天音がごくりと息を飲んだ。 「こんな風に、俺のこと誘うなんて......先生やーらし」 「っんーー」 耳元に口を寄せて囁くと、天音が感じるように背中を逸らせる。 「先生の全部ちょうだい。そして俺の全部もらって?」 男の顔になった宰に、快感と期待に全身を赤く染め、天音は宰の首に腕を回すと答えるように引き寄せた。 「せんせ......指三本もはいったよ......きもちい?」 部屋の中には、ぐちゅぐちゅと粘膜の濡れる音が響いていた。問いかける宰の声に、天音はポロポロと快感に染まった涙を流す。 「あっ......ん......きもちいっ」 快感に体を揺らしながら天音が宰の言葉に答えてくれる。あまりに卑猥で健気なその姿に、宰の嗜虐心が煽られる。 「何が気持ちいいの......」 襲われる衝動に抗えず、宰はさらに深く指を潜り込ませた。 「佐々木くんのっ......ささきくんのゆび...が気持ちい......あんっ」 宰は指を折り曲げて、天音の感じる部分を強く押した。 「ちゃんと言えて偉いね、ごほうび......」 「あぁっ......あん、そこばっかりだめぇ......」 そう言うと、宰は何度も何度もそこをなぞって天音を乱していく。その姿に宰の熱はどんどん煽られていった。言いようのない興奮と劣情が膨れ上がっていくのを感じる。荒くなる息を、宰は深く吐くことでどうにか抑えた。 「だめ? じゃあ止めた方がいいかな......」 天音が本気で嫌だなんて思っていないのを分かりながらそう言うと、指を抜くふりをする。その指を天音の中がきゅっと締まって引き止めた。 「あ......ちが、ちがうの......ダメじゃない」 「ダメじゃないなら、なぁに?」 あまりに可愛らしい引き止め方に堪らなくなる。宰はさらに天音を追い詰めた。宰の言葉に、指を飲み込んでいる場所が、ヒクヒクと反応して何度も締まる。 天音の熱と快感に潤んだ瞳からポロポロと涙が零れ落ちる。 いつもなら天音の涙なんか見たらとんでもなく慌てるところだが、蕩けきったその表情と宰を見つめる甘く熱い視線が、その涙は感じている証拠だと教えて宰をさらに興奮させた。 「気持ちいいの......だからもっとして......ささきくんのぜんぶっほしい......!」 「せんせい......」 宰は堪えきれず指を引き抜くと、服の前を寛げた。指の代わりに、宰自身を天音の入口に押し当てる。 「あ......」 宰の固く立ち上がった大きなペニスを見て、天音の喉がこくりと音を立てる。天音の後ろが期待するように、宰の先端にチュッと吸い付いた。 「入れるね......」 興奮を抑えるように、殊更優しい声でそう言うと宰はグッと体を進めた。 「んん...っ......ふ」 宰が奥に体を進めるたび、天音から苦しそうな声が漏れる。 「せんせっ...大丈夫?」 「ん......だいじょうぶっ......」 天音の様子にそう問いかけると、止めないでと言うように天音が宰の腕をギュッと握る。必死に体の力を抜こうと、天音が大きく息をした。 宰を受け入れようと、懸命に息を吐く天音が愛しい。 苦しさを和らげてあげたくて、宰は天音の前に触れた。掌で包み込んで、くちゅくちゅと音が立つほど、そこを刺激する。 「あぁ...あんっ...ぁ......」 親指の先で先端を弄ると、天音が大きく嬌声を上げて腰を跳ねさせる。快感に体が緩んだすきに、宰は奥まで一気に突き上げた。 宰の体が天音の臀部に触れる。 「ささきく......」 それに天音は、宰の全部が自分の中に入ったことを知る。 天音の腕が宰に向かって広げられる。 「ささきくんのぜんぶ......僕のなかに入ってる?」 「うん」 「僕、いま......ささきくんに抱かれてるんだね......」 「うん」 宰が頷いた瞬間、天音がふんわりと笑う。まるで白い花が自分に向けて、宰のためだけに咲いている、その微笑みに宰はそんな錯覚を覚えた。 「うれしい」 「っ......先生‼」 宰はたまらず、広げられる腕の中に飛び込んだ。すぐに天音の腕が首筋に絡みつき、強く抱きしめてくれる。 頭の中が天音が好きだという気持ちでいっぱいになる。 目の前のこの人が愛しくて、大好きで、何年も蓋をしていた天音への恋情と劣情が、一気決壊して止められなくなる。 天音の体を気づかう余裕もなく、激しく腰を打ち付ける。 「ああ、あんっ」 甘い嬌声と、天音の中のあまりの気持ちよさに脳が溶けていきそうだ。 「先生、すき、すきだ。あいしてる」 宰は夢中で腰を動かし、好きだと何度も繰り返す。 激しい動きに翻弄されながらも、与えられるとんでもない快感と、繰り返される愛の言葉に、天音の顔が喜びと悦びに歪む。 「イ、クっ...あぁ、もうささきくん...っ......!」 「いっしょにっ...せんせい!」 「あんっぁっぅ...あっああ――――」 「く......」 一際大きく宰が天音の中を突いて、二人は一緒に欲望を吐き出した。 ハアハアと息を吐いて、首筋に顔を埋める宰を、天音がギュッと抱きしめた。顔を上げて天音を見ると、天音はとてもとても幸せそうな顔で宰を見つめた。 「ささきくん......だいすき」 幸せそうな顔のままそう言って、天音が微笑む。 大好きと伝えてくれる天音の言葉に、この表情を宰がさせているのだと実感して、甘く溶けていきそうな気持ちに包まれる。 天音の瞳に映った自分の、天音と同じ幸せそうな表情を見ながら、宰はそっとその唇にキスを落とした。
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