恋の花咲くこともある

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 そんな場所に、だ。つい先日まで高校生だった女性社員をひとりで送りこんでみろよ。酔っぱらったアホ男子が絡んでセクハラしまくるのは目に見えているじゃないか。  危機管理のできている管理職らはリスク回避のために彼女を送り込むのは断念し、実績のある俺に乞うのは間違っていない。  ちなみに「一緒に行けばいいのでは?」という案は、暗黙のうちに却下された。  高校生の雰囲気が抜け切れていない小柄女子と、ガタイのいい二十代半ばの筋肉男。間が持たないだろうし、最初から俺を見てビビっていた彼女が気の毒だ。  部署のおっさんお兄さんたちは全員そう思って、俺が単身で花見担当となったのは自然の流れというもの。  まあ、そんなふうに気をつかった後輩ちゃんは、二年目の一月末で退職したけどな。身ごもって寿退社。  しっかり冬季ボーナスを確保して、新しく付与された有給休暇もぜんぶ使って、一月はほぼ休んで退職した。うちの会社の有給休暇は一月支給です。  会社の制度をフル活用。事務のベテラン女性は「誰かに入れ知恵されたんじゃない? ってぐらいの手際。すごいわ」と感嘆。  いいことだよな、うん。晩婚で少子化の世の中にあって、喜ばしいことだ。どうか俺の老後のために人口を増やしてくれたまえ。  しかし早ぇよ。まだ二十歳だろ。あの子より六歳上の俺なんて、就職してからこっち、浮いた話のひとつもないぞ。  これは完全なひがみである。
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