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「エイプリル・フールとは関係ない。
こんな話をするのに嘘なんて付かないし。
好きな人が出来たんだ。
ずっと考えてた。
俺は有紗といる時が、リラックスできるんだよ。
それって、有紗が好きって事なんだよな。」
「あ、有紗?」
「あぁ、有紗が好きなんだ。
きっと、随分前から。」
匠は「有紗」と名前を出す度に、優しい視線で宙を見つめる。
恐らく、「有紗」を思って…。
有紗は高校大学も一緒の私の親友。
有紗は細身でサラサラの茶色の長い髪、上目遣いをすると女の私でも守りたくなるようなタイプ。
有紗が好き…。
私はいつも言われてきた。
有紗が好きなんだ。
仲を取り持ってほしい。
「モテる女はツラいね」なんて言ったこともあったけれど、彼氏に「有紗が好きなんだ」と言われるとさすがに笑えない。
また、有紗…。
彼氏を見ると伝票を持って立ち上がっていた。
「ここは俺が払うよ。
ごめんな。
大学では普通にしてくれるとありがたい。」
「あっ、匠!?」
「今までありがとう。
真央とは楽しかった。
でも、有紗への想いは止められないんだ。」
匠は一方的に話して、席から離れて会計を済ませて店から出て行った。
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