エイプリルフール

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エイプリルフール

「真央、別れよう」 「へっ?」 私、梅原真央は驚いて目の前に座る自分の彼氏、佐野匠を真顔で見つめる。 授業が終わりアルバイトも無いので、金曜日だから家路に着こうとしていたところ急に呼び出された。 匠は金曜日がアルバイトのはずなのに、休んで私を大学近くのファミレスに呼び出したようだ。 最近、2人共忙しくて会えなかったから食事だけでもしようて誘ってくれたのだと思って嬉しかった。 たとえ、久しぶりのデート場所がファミレスでも。 しかし、ドリンクバーを注文してから暫くして「別れよう」と言われた。 私は口に含んだウーロン茶をこぼしそうになるほどびっくりして、匠を見つめる。 そう言えば、大学で教授が「今日はエイプリル・フールだけど、現実的な嘘をついてはおしゃれじゃないよ」と言っていたのを思い出した。 匠はエイプリル・フールだから、妙な事を言い出しているのだと可笑しくなって笑いながら言った。 「匠、エイプリル・フールだから言ったの? あんまり、良い嘘とは言えないわ」 「エイプリル・フール?」 「そうよ。 エイプリル・フールだから言ったんでしょ?」 私は少し重たい空気を纏う匠を茶化すように言うと、匠は眉間にシワを寄せた。
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