鬼たちの引っ越し大作戦!

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 桃太郎はぼやいた。村人たちと鬼、双方の話を聞いて客観的に判断しても、筋が通っているのは鬼の方である。もちろん、鬼たちも嘘をついている可能性もゼロではない。ただ、彼等のいかにも貧しく、栄養失調の様子。噂通り強盗をやりまくり宝物を奪って、ウハウハ生活を送っているようにはとても見えなかった。 「わかってくれるか、桃太郎よ」  鬼の首領は、目に涙を浮かべて言った。 「俺達、生きていくにはまた……村と交渉するしかねえ。その結果、どうしてもだめなら奪い取るしか方法がねえ。良いことだとは思ってない、でもこの島では、他に生きていく方法がねえんだ。どうか、見逃してくれ」 「それはできない」 「え」 「それはできないと言ったんだ」 「え、えええええええ!?」  一気に絶望した表情になる鬼たち。つんつん、と雉が桃太郎の肩を叩いて言う。 「え、じゃあどうすんだべ、桃さんよ。こいつらぶちのめすか?やせ細ってて肉もウマそうじゃねえべよ?」 「え、なに?……お前鬼の肉喰うつもりだったの?怖くない?」  なんかとんでもなく恐ろしい話が聞こえた気がするが、聞かなかったことにしよう。桃太郎はスルーを決め込んだ。 「そうじゃなくて。……このまま、あんた達をほっとけないって言ってるんだ」  何やら誤解されている模様。桃太郎は彼等を見回して言った。 「だって、このまま僕が見て見ぬフリして帰ったってなんの解決にもならないじゃないか。あんたらはここで飢えて死ぬのを待つばかり。船を襲ったら悪者扱いが加速するばかり。でもって、僕が去ったってまた誰か別の奴が鬼退治に来るだけだと思うぜ?今度は、“優しい鬼退治をします”なんて温情かけて話聞いてくれないかもよ。なんなら“罪を償えええええ!お前らは生まれてきちゃいけない存在だああああ!”みたいに血走った眼でいきなり刀振り上げて襲ってくるかも」 「……無駄に演技力高すぎて怖いデス、桃太郎さん」 「でさ。仮に次の刺客、その次の刺客と退けられてもさ。最終的に噂は都まで届くと思うんよね。……帝が討伐隊差し向けてきたらもう、お前らそこで詰みだと思わね?」 「……あー」  そうなのだ。  ここで桃太郎が彼等を見逃しても、根本的な問題は何も解決しない。鬼たちは生きる為に罪を犯すかもしれないし、最終的には餓死か討ち死にを待つばかりだろう。  だから。 「引っ越ししよう!」  桃太郎は提案した。
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