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春うらら
春うらら……この言葉が似合わなくなってどれくらいがたっただろうか。
冬を経過し、少しあったかくなってきたかしら? なんて思ってるうちに暑さを感じ、まさかね……と思ったときにはすでに夏。春はどうした、いつ去った?
格言として【春仕様の服は買ってはいけない】と(私が)言っている。
なぜなら『春です』の瞬間を逃すと、もう着る出番をなくし、且つ来シーズンまでお預けな上に流行りが変わってしまうからである。
着るものに関しては、春が一番難しいと感じていただけに、またたく間に通り過ぎゆく近年の春はさらに難しい。
通勤に気も使わなくちゃいけないし。
だから、薄手のシャツと薄手の上着があれば、ほら夏が来た!
はい、半袖開始!
で、いいと思うのよね。
ただ、彼氏ができると話がかわってくるから困ったもので、少しでも可愛く見られたく着るものにだって気を使うってものなの。
暑い・涼しいを繰り返して上着を着たり脱いだりするのって、邪魔くさくいし「なんだコイツ?」ってなっちゃうわけで。
昼夜の寒暖差が、ねー!
うららはどこいったのかって話よ。
「咲ちゃん?
何をさっきから難しい顔してるの?」
──はっ!
花崎さんが私の顔をのぞきこむ。彼との休日お散歩デートの真っ最中、私としたことが独走世界に入ってしまっていた。
「あ、ごめんごめん。4月ってこんなに暑かったっけ〜なんて考えてた」
どうでもいいことを考えてたってことになる。情けない。お花見シーズンも終盤に差し掛かって、いまいち盛り上がりにかけるデートって印象になっちゃう。遊歩道に広がる花びらの絨毯も楽しめるくらいにならないと。
──あ、またペットボトルが捨ててある。
地球温暖化が騒がれて以降、私はゴミの分別が忙しい。無力かもしれないが、この運動がせめてもの証となるよう願ってのことだ。
ゴミはちゃんと持ち帰ろうよ。ゴミ箱の設置があっても頓着ない状態が目立つこの地域。ここの自治体は分別が曖昧なんだっけ? ああ、地域によって分別の仕方や徹底が違うだなんて許せない。
もっと激しくエコな分別をだな──!
「はいはい、ストーップ」
彼の言葉が私の耳をまとう。
「咲ちゃん考えすぎだよ。思考回路を僕に戻してほしいな」
花崎さん……、私またやってしまったわ、ごめんなさい。
宇宙の謎もさることながら、地球温暖化についても私を大いに悩ませるものなの。
いつも連れ戻してくれてありがとう。
夜桜にすれば良かったね。
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