嫌な予感はあたっていた

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嫌な予感はあたっていた

ピンポン 訪問者を知らせる呼び鈴が昼下がりの静かなリビングに響く。休日をまったりと昼寝して過ごしていた母は「でて」と僕に一言いう。僕は、宅急便が来たのだと思い、元気な声で「うん」と返事をする。 まるで、微かに入り込む日差しによって生命力を得ている植物のような玄関の雰囲気は静寂と落ち着きが感じとれると共に心を穏やかにしてくれる。 そんな玄関の扉を「はい」といいながら開く。 そこには、微かに不気味な笑みをした中年の女性が二人立っていた。配達でないことはすぐわかり、話を聞いてみると父親を呼んでほしいらしい。 「なんか来た人が用があるみたいだよ」 僕は父の元に行き、訪問者のことを伝えた。父はやや額にしわを寄せながら「いま、手離せれない」といつもの明るい父の声からは考えられない険悪さ漂う声音は“出たくない相手なのだろう”と心情を容易に理解させてはくれるが、たとえ他人に対する不快感だとしても親から自分に、この状況は耐えがたいものがあり、声をかけるのも億劫になるほどにはためらわせてくる。 話しかけないわけにいかないこの状況を切り抜けるために無感情で… そう、僕は、無感情で伝えれば、業務のように伝えれば、僕の心には干渉してこないから嫌な思いをせずにすむと…きっとそうだと そして、ぼくは再びその訪問者のもとに行き「今、手離せれないようでぇ」と言う。表向きは笑顔を作ってはいるが、僕の心の内には警戒心と多少の恐怖が潜んでいる。 「●●さんってしってるかなぁ」 できるだけ話したくないぼくの心情と対象的に訪ねてくる。 「すみません、知らないです」 そう答えると、不気味な笑顔は微かに険しさを漂わせ、ぼくは一瞬言葉を失った世界に引き込まれる。「あの、●●さんからメッセージ預かってるって伝えてくれる」沈黙の数秒間で考えられたであろうこの言葉によってここにひきもどされる。 僕は「●●さんからメッセージ預かってるって伝えてくれるっていわれた」と父に言うと不快感感じ取れる声、眉をひそめた険しい顔で「誰」と僕に聞いた。 この状況には耐えがたいものがあり、様々な感情や考えがまるで沸騰した水でふつふつと無数に沸き立つ気泡のように、頭の中では抑えきれないほど、煩雑に… … 出たくない相手 様子から察するに分かっているはずなのになんで聞くんだよ。しかも、他人に対しての不快感をなんでこっちに向けられなきゃならないんだよ。誰か聞くんだったら、事情話してよ。こっちは蚊帳の外なのに聞くのかよ。別に聞きたいわけじゃないよ、別に話してほしいわけじゃないよ、若干怖いし、けど話さないなら仲介役させないでよ。察されないようにしてよって。 もともと彼はその人がなんの人か全然知らないけれど、その人関連?らしき人が来ると両親がいつも、非常に嫌がって不快感が出ていたのは知っていました。ですから、彼はこのようにいろいろ考えてしまうようなのです。 … そして、僕は父に「よくわからないけど、いつもなんか来てるじゃん。その人なんじゃないの」と言った。そうすると父は「あ~」と それで伝わるんだったら結局のところさ… 結局わかってるんじゃん。なら誰か聞かないでほしいと思ってると、父は「仕方ないから、出るけど」と険しい顔をして、今にもため息が出そうなあきらめが感じ取れそうな声で言った。 正直めっちゃ嫌だったけど我慢したと思って自分の机のところに戻った。ほっとした心はすでにひたひたに注がれてしまった負の感情でいっぱいになっていた。父は玄関に行って、訪問者の対応をしているらしい。 しかし、やっとの思いで用を済ませたと思ってる僕の予想は当たらなかった。 母は訪問者に対して恨みでもあるのかと思うような声音で「もう行ったの」と聞いてくる。ここでもう我慢できていた心はどこかにいってしまった。 どうにかつり合いがとれていた、負の感情はつり合いがとれなくなって、あふれてしまった。 そして、僕は「まだ、行ってないに決まってるじゃん」とあふれてしまった負の感情はまるで蛇が威嚇するかのように…。そうして、不快感を出すことでやめてくれと心の中で思いながら、気づいてくれって心の中で叫んでいた。 … まあ、普通の訪問者だったら、「もう行ったの」なんて聞くはずないし。来てほしくないいつもの訪問者…それだったら、訪問者が誰かわかっているんだろう。母は訪問者が誰なのか、わかっているんだろう。だから「誰」とは聞いてこないはずだと思っていた … そしたら母が「誰が来たの」と言った。 回避してきた僕の地雷は、回避できず踏まれた。 こうして負の感情を抑えていた器はズタズタに破壊されてしまった。 … 誰か分かっているのに聞かないでよ。しかもその訪問者に向けての不快感こっちに向けてこないでよ。関係ないのにこっちに向けてこないでよ。 … そして、僕は「は、知らないし」 放出してしまった負の感情はまるで小さかった蛇を巨大化すると共に相手に噛みついていく。 母が「そんな言い方するんだったら…」と言う。 まるでグツグツと音を立てて沸騰した負の感情は僕を思考の檻に閉じ込める …… そんな言い方をさせたのはそっちじゃん。 まあ、その訪問者だから出るのが嫌で俺をだしたって考えたら嫌で、嫌で。(どっちかわからないけど) だったら、そういう言い方させないでほしいほんとうに。 …… これでギスギスして、その後 普通に接させてもこっちは気まずいんだよな………
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