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エイプリルフール
目が覚めると隆の姿はそこにはない。部屋も心なしかすっきりしている。
彩希はベットから起き上がり、キッチンにあるコーヒーメーカーのスイッチを入れると、マグカップを取りに食器棚に向かう。
食器棚にはいつもお揃いで置いてあった隆のコップがない。彩希は左手で頭をかきながら、独りぼっちになったペアカップを取り出すと、そこにコーヒーをなみなみと注ぐ。
窓から降り注ぐ陽の光は、部屋の埃を乱反射してダイヤモンドダストのような輝きで部屋全体を満たしていく。
彩希は目を細め、その輝きを眺めながら独り言をこう呟いた。
「エイプリルフールとは言え、隆も手が込んだことするものね」
そして窓から降り注ぐ陽の光は、彩希の瞳に溜まる何かにも輝きを与えていた。
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