七瀬

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「私ね、前世のこと覚えてるよ?」 「え?」 「覚えてるんだ……」  何も言わない壮馬に気づかず、言葉を続けた。 「もしかして、壮馬も?」 「え?」 「壮馬も、なにか思い出したの?」  十年ぶりに口に出したら何だか、込み上げてきちゃって自分でも止められなかったんだ。 「思い出すって……?」  ……壮馬?  その首をかしげる仕草に気づく。  また私、やっちゃったのかもしれない。  大体、前世のことを覚えてる、なんて言い出すとか、きっとヤバイやつだと思われてるのかもしれない。  もしかしたら、壮馬も、なんて思った数分前の自分を誰か電車に乗せてしまってほしい。 「や、ウソ、ウソ。前世とか、冗談だから!」  ハハハッと笑ったら目の前の壮馬がボヤけて見えた。
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