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壮馬
「なあ、マジで七瀬って、前世のこと覚えてるの?」
「はあっ!?」
ふと思い出したのは、今朝の夢がきっかけだった。
十年も経ってから、急に思い出した七瀬の秘密。
幼なじみだった俺たちは、あの日、七瀬の提案でお互いの秘密を一つだけ教えるゲームをしたんだ。
「なに、それ?」
「へ? 覚えてない? ホラ、秘密の教え合いしたことあったじゃん?」
「えっと、……なんだっけ? たしか、壮馬の算数のテストが八点だったとか?」
「ちょ、デカイ声で言うな」
からかうように、ニヤリと笑って舌を出した七瀬は。
「私が言った秘密は、ウチのママのお尻にアザがあるってことだけど?」
「はあ!? そんなの初耳だし! つうか、今更いらんて、その情報。おばさんの顔見れなくなるだろ!」
七瀬の母ちゃんの品のいい笑顔が浮かんできて、慌てて頭から追い払う。
「あの時、七瀬、絶対言ってた! 前世のことを覚えてるって」
『私ね、前世のこと覚えてるの』
真剣な顔で、誰にも言わないでね、と何度も念を押していた七瀬に、俺はバカみたいに。
頭の中では『ぜんせってなんだ?』と漢字すら浮かばず、それを隠し語彙力のないまま『すげえ』と笑った。
あの時の七瀬ってば、微妙な顔してたもんな。
俺のリアクションに『バカにしてんのか?』って思ってたんだろうな。
うん、今なら俺もそう思うわ、あの時の自分の浅はかな態度は。
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