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「言ってない! なに? なんなのイキナリ?」
「いや、今朝の夢がさ、なんか変な夢で?」
「変な夢?」
俺の頭の中を覗き込もうとしているような目をしてた七瀬になんだか、タジタジとなってソッポを向いた。
「一体、どんな夢見たの? 壮馬」
「えっと」
さあ、言えとばかりに待ち構える七瀬の圧に怖くなり。
「えっと、ほら、小ニの頃の夢だって。七瀬が前世のことを覚えてるって言った時の」
「だから言ってない――!」
口元を尖らせて、クルンと背を向け歩き出した七瀬の後ろを追いかける。
もうすぐ十一年目となる幼なじみの七瀬との通学風景は、小学校を卒業して、中学校に上がっても変わらなかった。
ただ、去年の春、高校入学と共に、大きく変わってしまったことがある。
「じゃあね、壮馬! いってらっしゃい」
「おう、いってきます! 七瀬も気をつけてな」
改札口を出て、七瀬は右へ、俺は左へ。
エスカレーターを登った先、向かいのホームに立ち、スマホに視線を落としている七瀬を見つける。
もうこちらなど見ていない七瀬は誰かと連絡でも取っているのか、時々口元に笑顔が浮かんでいる。
俺の知らない七瀬だけの世界がきっとある。
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