壮馬

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「壮馬、今、そっち行くから待ってて」  手を振りながら階段に向かってホームを走り出す七瀬の姿を見て、弾かれたように俺も来た道を全力で駆ける。  転げるように階段を下りながら、七瀬の行動を考えている。  なんだ? 一体、なんで電車に乗らなかったんだ?  遅刻すんじゃねえの? なんて心配は、自分だってそう。この電車に乗らなかったら、多分アウトだ。  でも、七瀬がこんなことをしたのは今日が初めてだから、どうしたって気になる。  もしかして、あのイケメンになにかされたのか!?  階段を降りきって走り出そうとして七瀬と鉢合わせ、立ち止まった。 「七瀬、なにかあったのか?」  お互いに息をきらして向かい合う。  膝に手をついて、ハァハァと呼吸を整えた七瀬が俺を見上げて。 「私ね、前世のこと覚えてるよ?」 「え?」 「覚えてるんだ……」  泣き出しそうな顔で笑った七瀬が、今朝俺の夢に出てきたあの顔によく似ていて、思わず胸の辺りが一瞬ドクンと苦しくなって、それからくすぐったいような気持ちになる。
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