七瀬

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『なあ、マジで七瀬って、前世のこと覚えてるの?』  その一言を聞くまでは、もう期待しちゃいけないって思っていたんだよ。  だけど、もしかしたら?  壮馬も、なの? 「西田さん、電車乗らないの?」  朝の通学電車でいつも一緒になる同じクラスの男子が足を止めた私に首を傾げてる。 「ちょっと、忘れ物しちゃって」  バイバイと手を振ったら彼は驚いていたけれど、そのまま電車は走り出す。  目の前が開けたらホームの向こう側で、電車を待つ壮馬がスマホを見てため息をついているのが見えた。 「壮馬っ!」  恥ずかしいけど、大きな声で壮馬を呼んだら、ビックリした顔で私を見てた。 「壮馬、今、そっち行くから待ってて」  もうすぐ壮馬の乗る電車が来ちゃうから、それまでに聞きたいの。  人にぶつからないように、ホームを走り長い階段を駆け下りる。  駆け降りた先で、なぜか壮馬が同じように向こうから走ってきて、お互い立ち止まった。 「七瀬、なにかあったのか?」  壮馬が心配そうに私を見下ろす。  昔からその優しさが大好きなんだ。  多分、この時代ではそれが私の独りよがりだとしても。  だけどね、もしかして、もしかしたら、私と同じように壮馬も前世を思い出してくれてるとしたら――?  勇気を振り絞り、息を整えて。
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