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陽は、アレさえなければカケルとは結婚しなかった。
最初の筋書きもひっくり返していただろう。
そして、今頃カケルを公開裁断で裁いていただろう。
あの「埼玉連続女子高生殺傷事件」
アレは魔物の仕業だ。
相手は陽が高天原の女王と知ってワザと仕掛けてきた。
殺さなかったのも、殺したら本来の「高天原の女王」が出てきてしまうからだ。
彼の国の者が考えそうなことだ。1番苦しむ方法を使う。そんなに憎いか「陽の女王」が。
ヒヒカリは、高天原の『青の離宮』の噂をずっと以前から聞いていた。「陽の女王」の考えが全く分からなかった。
本当は今も分からない。
ヒヒカリは他国の柱ではあったが、『囲み』の指揮官として高天原に介入した。子飼いの神猫2匹を連れて。その裏で赤界のエリに嘆願書を出した。
「赤色を一柱。高天原の『囲み』に派遣してれるように……人間として肉体を持ち、神力を封じて。」
なぜ、人間としてとしたのかは、その心を見せたかったからだ。「陽の女王」に。
赤色は決まった一人しか愛せない。カケルと対極に存在するものを見せたかった。
エリからの返事は無かった。『囲み』が始まっても赤色は現れなかった。光が生まれた時、近くにいるのかと思ったが居なかった。
諦めかけた頃に「先生」が現れた。
話を聞いてみると先生は、中学1年でカケルに出会い、カケルの近くにいた。
エリに出した嘆願書には、いつ赤色を入れるかという時期を書いていなかった。
あちらは、了承し、早々と赤色を『囲み』に送り込んでいた。
「先生」は完全に人間だ。年老いていく。そして、人間として死ぬ。赤族の考え方はドライだ。
無能な柱は切り捨てる。だから、極東の神界の再編成「廃国」を行えたのだ。30余りの国を消滅させ王族のほぼ全員を無に返した。
先生の母親の名前は「東 エリ」。
それを聞いた時は本当に驚いた。
喩え、自分の子であったとしても、この『囲み』で求められた役割を果たさなければ、「器」じゃなかったと切り捨てる気だ。
先生には赤族の「冷酷」なところは全く見受けられない。
先生とは何年も会っていない。ヒカルにも。
今の人間は長生きになった。ヒカルの方が先に「時間切れというお役目下がり」を迎えるかもしれない。
ホダカも水川に着任した。
陽も陽になっているだろう。
4年後に「来降の儀」が行われる。
田中陽の時と同じように。。。
あの時の陽は金髪碧眼で西のポールが付き添っていた。
西の神界は戒律が厳しい。ポールは儀式に参列することなくサッサとシドニーに帰っていった。
盟約は切れたはずなのに、その後もポールは西の神界には帰らなかった。ずっと、陽の父親で居続けた。
穂月がお役目下がりをしたらポールも西の神界に帰っていった。
ひょっとしたら、陽は、その時に既に見たのかもしれない。
私が見せたいと思っていた心、「真実の愛情」を。
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