14、初恋

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お嬢さんが、女王じゃないってどういうことだ?女王は何処に行ってしまったんだ………。 一木は、麻布の王宮マンションに車を置くと、そのまま自分の田町にある賃貸マンションに帰った。1LDKの部屋の中はパソコンが乗ったパソコンデスクとベッドだけ。クロゼットの中は漫画で一杯。 一木は彼なりに悩んでいたのだ。 なんで「けつじゃう」の私が指揮官なのかと。女王が中身だと思っていたお嬢さんの中身が誰だか分からなくなったら、珠を切っても意味無いじゃないか。どうやって戦えと????? 仕方なくバトル系ゲームで練習するしかないではないか! 将棋で王将が無かったら、どうすればいいのだ。そんなシュミレーション立てようがないではないか!あの「来降(らいがう)の儀」を見て安心していたのに……。酷い!それは約束が違う!と叫びたい。でも、叫ぶ相手の女王が消えた!ああ。。。女王様! 一体いつから居なかったんだろう? 「来降」から消えちゃった。燃え尽きた?光りすぎ?。。。と言うことは、私が「静謐な」とか思っていたのは、女王様じゃないと言うことだ。市松人形は女王様じゃない。。。なんか嬉しい。 可愛い。。。と思っていーんだ!やった! ドキドキワクワクする。この感情は何だろう。あの太い眉も魅力的なんだ。小さくて細いところも可愛い。少し我儘だけど女王に比べればナノレベルだ。良かった。早川先生とバトルになるかと思っていたんだ。本当は。先生、年寄りだから余裕だけど、私は戦ったことがないから自信がなかったんだよね。 。。。先生は23年待ってたって言ってたな。人間の23年は長い。女王は平気でそういうことしそうだから、ますます気の毒になる。 市松人形のあの子は誰なんだろう?高天原で会ったことあるかなぁ。女の顔なんて碌に見ないで本を読んでいたから、分かんないや。 好きになっちゃったら、その後はどうすればいいんだろう????? 先生に質問するしかないね。私は謙虚だから平気。先生に質問しよう!きゃっ!! と、前の晩は浮かれていたら、会社に遅刻した。今日は秘書室でのお仕事。私も会長秘書になったけど、井上ももれなく付いてきた。もう、面倒臭い。勝手に好きなようにやらせてる。井上が困った時だけ、ヘルプ出してきた時だけ手伝うと決めた。自分は自分の仕事に徹している。今日は、仕事終わりになったら、赤坂のクリニックに行って早川先生に私の面談をしてもらうんだ。 先生は、かなりイケてないのに女王様の心を射止めたんだから、何か魔法を知っているに違いない。 先生は私を面談室に通してくれたよ。先生はびっくりした顔をしていた。 「一木さん、どうしたんですか?」 「あのう、人生の大先輩にお伺いしたいことがあるんです。」 「あのね、ここは病院なの。病気じゃないなら、帰りなさい。」 「じゃあ、待ってます。お仕事がとぢめになるまで……」 「はぁ?とぢめ?何それ?何でもいいや。待合室で待ってて。」 早川先生の診察が終わったのは夜の8時を過ぎていた。 「女の人を好きになったら、その後どうすればいいのでしょう?」 一木の質問を聞いて、あまりにも子供だったのに葵は驚いた。 「一木さん、幾つよ。40過ぎてるでしょ。」 「え〜っとそうですね。そのくらいです。」 「それに答えはないよ。だって、私だって(あかり)の方が私を気に入ったんだから。」 「え〜本当ですか?それこそ謎ですね。」 「失礼だね。君は。私だって最初からジジイじゃないんだよ。答えがないことが一杯あるのよ。わかった?」 「そっか。うん。勉強になりました。で、どうすればいいんでしょう?」 「好きな人に誠実であるだけ。答えは相手が出すの。そういうもの。くれぐれも直球で告ったりしないようにね。それができるのは、10代のうちだけだよ。」 一木は先生の有難い御指南を受けた。で、どうしたかというと何もできなかった。
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