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15、僕の君へ
長いお付き合いになっている僕の患者さんたちが、勝手に「ハヤカワーズ」というグループになっているらしい。
少し照れる。精神科医になって40年近くが経つ。僕ももう64歳だ。
君は帰ってきたのかな。帰ってこなかったのかな。まだ、会えないね。
僕の患者さんで長いお付き合いが終了確定してしまった人がいる。もう、何十人目だろう。百人超えているかもしれない。
彼女の手紙で印象的な言葉がある。
「人生において、ほとんどの人間が多分何一つ自分では選べないんです。」
確かにそうかもしれない。でも、みんな足掻くじゃない?選べなくても足掻く。それが生きていると言うことなんだと僕は思う。
僕は、君を待って、もう24年。前の7年も合わせたら31年。これは評価して欲しい年月だよ。
その間、僕は僕で自分の役目を果たしてきた。どうも君も同じみたいだね。
一木さんという少し真面目が変な方向に行っちゃってる人から聞いたよ。
苦しいと思った時期が後から思うと1番輝いている時だったりする。
歳を取ると言うことも決して悪くない。そういうことが分かるようになるからね。
待ってるから。ずっと待ってるから。これが僕が決めた僕の人生だから。誰に強要されたわけでもない。
人生は選べなくても決めることはできる。自分で決めたことは止めてもいいんだ。
何もかも自由だ。
自分の心の世界の真ん中に自分は立っている。みんなそうなんだと思う。
鳥の目は持っていなくても、上を向けば多分自分の真実が見える。
そんな気がする。
僕は、どこまで行っても君を忘れられない。
あかり、僕は本当に君を愛している。
もう、そう言ってもいいよね。
愛している。簡単な言葉だ。垂れ流しだ。口に出すと薄くなる。嘘になる。
この心というものは本当に厄介だと僕は思うよ。
Crystal Ball3〜捕縛隊の派遣〜完〜
〜4、落花生〜に続く………
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