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分娩室から看護師が出てきて海斗と晃に「元気な坊ちゃんですよ。お母さんも大丈夫ですよ。安産です。」とニコニコしながら言った。
海斗と晃は顔を見合わせる。考えていることは同じだなと海斗は思った。
産後の処置が終わると、先ず赤ん坊に対面できた。海斗はじっと自分の子供を見た。その横顔を見た晃は言った。
「何色だ?」
「青。田中翔と同じ青だ。でも、同じ色だからって確定はできない。青は結構居る。」
「邪なものは感じるか?」
「感じない。じいちゃんこそ、何を考えてるか分かる?」
「無理だ。赤子は言葉を持たない。だが、随分ご機嫌だ。鼻歌でも歌ってるようだ。」
「じいちゃん、あの子似てるね。僕に。」
「お前の子供だからな。似ていて当たり前だ。」
「あの子はビシバシ躾る。今日から。田中翔に似ない様に。」
お七夜の略拝詞は晃が唱えた。
海斗と文恵の第一子は「翔太(しょうた)」と名付けられた。
そして「護り珠」を右手にかけられた。小さな手に掛けられた護り珠の玉は大きく見えた。
田中翔太の人生が始まった。
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