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陽は一木をリビングまで連れていくと、ぬいぐるみを両手に抱えて持ってきた。
そして、ソファーに並んで腰掛けた。
「これで、誰が見ても遊んで貰ってる。遊んで上げていると言うことになるだろう。
我はこれから「水川の護り珠」を取りに行かねばならぬ。5歳までにな。身体が小さいうちは珠で縛らなくても『衣』の消耗はない。『衣』の方に勢いがあるからな。その限界が5歳だ。前の田中陽の時もそうだった。
水川との縁を作る。それは我がやる。其方は、もっと神澤家に入り込め。これから我は、一木さんを押す。何につけても一木さんを呼んで。」と神澤哲郎に言う。
珠に縛られたら、其方に全てを任せる。指揮官の其方に。
翔太は未だ6歳。子供は殺せぬ。少なくとも翔太18歳まで水川との縁を保ちつつ様子を伺うのだ。時が来たら我の珠を切るのだ。
その後は我がやる。わかったな。」
陽は、ぬいぐるみを一木とやり取りしながら話をしていた。
「ようちゃん。どこにいると思ったら一木に遊んでもらっていたの?」神澤哲郎がリビングに入って来た。
「うん。このおじちゃん、面白いの。よう、このおじちゃん好き。」
呆気に取られている一木には配慮なく陽は一木の顔をピタピタ叩く。
「みんなでガーデンに戻ろう。」と神澤が陽と手を繋ぐ。陽は反対側の手を一木に差し出す。
一木の方を向いてメンチ切って左の口角を上げる。
一木はうんざりしてきた。この女王は本当に頭が悪すぎる。子供だろうがなんだろうが、さっさと処分してしまえばいいものを。
子供に見えても中身は、あの青の離宮のカケルなのに。
カケルは我が国の恥、汚点、知らぬ者など誰もいない。女王自身があの穢れ者を高天原に連れてきた。おまけに女王は『囲み』で他の人間の男を好きになり『囲み』は大失敗。結果、カケルに逃亡されたというのに。未だ、情けをかけるというのか。
人間ならば、とっくの昔に女王自身がその座を追われている。そのくらい大きな失態を犯しているのに、未だ10年以上の猶予を与えるのか。女王の言ったことは、一木の理解の範疇を超えていた。
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