第0章 プロローグ。

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運命に翻弄されたとしても… 己の望みが叶わない毎日だとしても… 希望を捨てたり自棄にはならないで… 盛橋「麗花(シャンリー)、私達が…誰かのために…生まれ育った秦国の為に生きる時がいま、来た…。」 17歳の時に反乱を起こしたものの 鎮圧され罪を許された盛橋は、 紀元前207年10月17日で49歳となり… 子櫻「伯父上が崩御された年齢と同じになられましたな…父上。」 感慨深げに語る子櫻でしたが、 その場所は秦国の首都である 咸陽にある王宮近くでございました。 麗花「子櫻、感慨深げに話している場合ではないと思うのだけれど…」 何故家族がこのような物騒なところにいるのかと言いますと… 胡亥「朕には美女がおれば良い。」 秦2代目皇帝・胡亥を討伐するため 派遣された軍隊の中に名前を連ねた盛橋を支えるのは… 麗花(シャンリー)「盛橋様、宜しいのでしょうか?今は亡き異母兄(おにい)様に逆らってでも…元の(さや)に戻す事が本当に秦国の為になりますか?」 盛橋の第一夫人で燕王・喜の養女となり公主と同じ立ち位置で嫁いで来たものの凛華(りんか)という和名(わめい)しか覚えてない記憶喪失の女性でしたが子櫻の母親でもある。 盛橋「…胡亥(こがい)に全てを任せて国を滅ぼすよりも子櫻(しえい)に後事を任せて秦国のため努力するのが正しい事だと俺は判断したんだ…。」   麗花(シャンリー)は夫であり戦友でもある盛橋からの言葉に頷き… 3人の家族は歩幅を合わせて秦国の宮廷へ乗り込む事を決意しました。 盛橋「胡亥を…玉座から引きずり下ろし新たな王として子櫻を即位させる。」 麗花「盛橋様に従い我らも進軍し、 胡亥から権威を取り戻します。」 子櫻「父君と母君に従い、 後事を承りまする…」 盛橋、麗花、子櫻に付き従う 精兵達は1000人を超えており 反乱の渦は今まさに…秦国の皇帝を退位…させようとしておりました。 しかし… 胡亥(こがい)は万民を敵に回してはいるものの皇帝であるのは確か…。 なので、 盛橋ら率いる精兵達が幾ら怒りを覚えて宮廷を取り囲んだとて容易に侵入する事は出来ないのでございます。 そんな絶望的な状況である盛橋らの前に現れたのは… 趙高「盛橋様、麗花様、子櫻様。 お3方の為に力をお貸しします。」 始皇帝の母親であり秦国の太后でもある蓮華(リェンファ)の側近だった宦官・趙高でございました。 趙高はロウアイ《変換不可》と太后でもある蓮華が秦王朝に反旗を翻した際 その罪に連座し流罪となりましたが、 秦の始皇帝だった嬴政の崩御に伴い、その罪を恩赦され胡亥に仕えました。 但し…胡亥を暗君にした黒幕が… 実のところ趙高でございました。 趙高『全ての罪を胡亥全てに押しつけその命で償って貰う事にする。』 盛橋はその趙高の思惑を何となく 感じておりましたので息子の子櫻に対して秘かにある事を命じました。 それは… 盛橋「…子櫻、胡亥の独断で全ての失策を遂行したとはさすがに思えぬ。それ故に趙高を信じすぎてはならぬ…。怪しき素振りあらばすぐ手討ちに致せ。」 子櫻「畏まりました。」 父子(おやこ)が水面下でこのような打ち合わせをしている事など知る由もない趙高は… 趙高「では、参りましょう。」 盛橋父子から警戒されているなどとは微塵も疑う事などなく宮廷へと向かって行ったのでございます。 趙高の手引きにより宮廷へ侵入を果たした盛橋ら率いる反乱軍と相対した胡亥は… 胡亥「そなたら、朕を何だと思うておる?朕は…朕は秦2代皇帝である!趙高、この愚か者共を何とか致せ!」 自らが受け継ぐ血筋を主張し、 叔父たる盛橋の事を〈愚か者〉だと 悪く言ったのでございます。 趙高「それが愚かな態度にございます。自らの血筋を棚に上げ国をここまで傾けたるは誰の罪にございますか?」 胡亥「おのれ!趙高、朕を裏切るとは とんでもない恥知らずめ!叔父御、この恥知らずを討伐して下され!」 胡亥は良くも悪くも素直過ぎたが為、 趙高の言うた通り(まつりごと)に関心を持たずに日々を過ごしてきただけなのですが… 盛橋「貴方様は皇帝、ならば…何故、 このような反乱が起きるまで秦国の傾きに気づかず生きて来られたのか!? 斯くなる上は…子櫻に王位をお譲りになられては如何か?」 救いようのない甥ではあるものの、 甥は甥であり…肉親は助け合うもの…と思っていた盛橋は胡亥の命だけは助けようとしました。 それは… 麗花(シャンリー)とて同じ思いで、 麗花「盛橋様が仰せの通りです、 これからこの国は子櫻が治めるので その位を子櫻へお譲り下さい。」 命だけは助けようとしましたが、 その時趙高がお酒を出しました。 趙高「退位する前に 杯を交わしては如何ですか?」 趙高の裏切りに怒りは覚えていたものの胡亥は酒が大好きなので…そのお酒を吞み子櫻に渡そうとした瞬間、 ガシャン! 胡亥は毒酒により暗殺され、 子櫻が王位を継承しました。 子櫻「では… これより私は盛情王と名乗り先の皇帝により傾国した本国を立て直す。」 子櫻が王位に就いた事により、 盛橋の正妻であり子櫻(しえい)の母親でもある麗花(シャンリー)は太后になりました。 ちなみに麗花は、 出自不明であり和名を名乗っていた 記憶喪失の女人でございましたが、 代王・嘉の勧めにより燕王・喜の養女として迎えられ盛橋に嫁ぎました。 ちなみに麗花が名乗っていた和名は、 凛華(りんか)でしたが…夫である盛橋より中国名・麗花を賜り2人の間には子櫻(しえい)が産まれこの度、 王位の位を受け継ぎました。 盛橋「私が王の父親となる日が来るなぞ感無量と言わざるを得ない。」 盛橋と麗花は感慨深げでしたが、 子櫻は責任重大な自らの運命に かなりの圧迫感を感じながらも 運命を受け入れる道を選びました。 何故ならば… 趙魅音「私も正妃として子櫻様に従いまする…。ですからお一人で苦しまないで下さりませ。」 子櫻には正妃である趙魅音がおり、 そのお腹には子がいたからでした。 子櫻「守るべき者、守るべき国のため全力で職務を遂行する。」 こうして火中の栗を拾ったような 子櫻ではありましたが…その波乱な運命は父親である盛橋が産まれる前から既に決められていたようなものでした
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