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第1章 王位継承権とは…?
古代中国の春秋戦国時代には、
非業の運命を背負った者がいました。
それは…
中華七雄の中でも歴史が古い秦国の第30代君主で5代目の王となった荘襄王、諱は異人改め子楚でした。
安国君として太子と同等の位に
着いていた嬴柱が夏姫の産んだ息子の字を異人にしたのはそもそも
嬴柱「まるで異人のような顔をしておる。では…子の名前を異人とする。」
異人とは外国から来た人達の事で
適切な表現ではありません。
夏姫「私の事を愛して下さらないのならそれでも構いませぬ…しかし…名前が異人だなんてこの子が不憫です。」
異人の父親である嬴柱〈後の孝文王〉には異人を含め20人以上の子がおり
妻もそれ相応におりました。
嬴柱は趙から人質を出すように催促されるとさも当たり前であるかのように
異人を出してしまいました。
夏姫「殿、趙へ侵攻するのだけは何とぞお辞め下さりませ。私を愛して下さらなくても構いませぬが…我が子・異人だけは…お助け下さりませ。」
嬴柱「安国君のなす事に異を唱えるなぞ
やはりそなたは…異質な存在だ…。」
夏姫は母親として異人を救出するため
恥も外聞もお構いなしに土下座しましたが嬴柱は聞く耳持たずでした。
趙国で人質として生きる異人は、
怨みの全てを向けられ…毎日生きる事に必死でございました。
異人「今日も何とか生きていたな…」
そんな絶望的な状態に置かれていた
異人ではありましたが捨てる神あれば拾う神ありとは良く申したもので…
呂不韋「もし、こちらは異人殿のお住まいに間違いございませぬか?」
趙国を基盤に商売を始め、
それが見事軌道に乗って大商人となりし呂不韋でございました。
異人「私のような者に構っても
そなたに利はあるまい…。」
紀元前260年02月07日、
21歳となった異人の前に現れたのは、
30歳の呂不韋と20歳となっていた趙国で一世を風靡していた舞姫でありその寵姫・麗霞でした。
呂不韋「我が寵姫の舞を御覧になられながら今後のお話を致しませんか?」
趙国の首都である邯鄲で
1番の人気を誇る絶世の美女である舞姫・麗霞をひと目見た異人は…
異人「ならば…入るが良い。」
人生に投げやりだったはずでしたが、
それから一転、話を聞く事を決めたのですがどうやらそれには条件があるようで…
異人「話を聞く代わりにその姫を私に譲ってはくれぬか?」
呂不韋と相思相愛である麗霞を
自らの后にしたいと懇願しました。
麗霞「…私は嫌です、
殿のお側にいたいのです…。」
麗霞は当然ながら拒絶し、
呂不韋もまた…
呂不韋「邯鄲に咲く花を無残に摘みとる事は私には出来かねまする…」
寵姫の意志を尊重し断りましたが、
1度生きる事を諦めた異人の荒んだ心は呂不韋が考えていたよりも遥かに闇が深いようで…
異人「ならば…話はこれまで…
私は生きようが死のうが別に構わぬ。」
しかし…
呂不韋が天下を掌握するには…
この王子を何とかするしかありません
なので…
呂不韋「…では、麗霞を説得してからまた来たいと思いますがそれで宜しいですか?」
呂不韋は泣く泣くこの取引に応じる道を選んだのでございます。
麗霞「…殿!?」
呂不韋は嫌がる麗霞を説得するため
自らの屋敷で1日話し込みました。
呂不韋「…麗霞、そなたの産んだ子が太子となれば我らが2人で天下を掌握する事が出来るではないか?太后と丞相ならば…いつでも近くにいられる。違うか?」
麗霞「…殿…。」
こうして…半ば強引ではありますが、
納得した麗霞は…
麗霞「不束者ではございますが、
宜しくお願い致します。」
異人に嫁入りを果たし、
異人は約束通り呂不韋の話を聞く事にしました。
異人「私が王になるには如何様にすれば良いのか、呂不韋には分かるのか?」
異人とて叶うなら
このような投げやりな人生…ではなく
王として威厳に満ちた人生を過ごしたいのでございます。
呂不韋「ならば…華陽様のお力を得るしかありませぬな…」
華陽夫人は楚の公主で孝文王が寵愛して止まない麗霞と並び立つ程の美貌を持ち合わせた后でございます。
但し…
華陽夫人と孝文王には子はおらず
もし異人が華陽夫人に気に入られたなら20人以上の兄弟の中で王位継承順位が1番になるのでございます。
異人「我が母親は父上より愛想を既に尽かされており私が生きようが死のうが関係ないと思っておられるのにそんな私が父上の寵姫に養子として迎え入れられる事なぞ出来るのであろうか?」
呂不韋「必ずやこの呂不韋がお2人を頂点へと君臨させてみせましょう。」
呂不韋は異人の住まいを豪奢な建物へと作り替えると秦国へと出向き…
華陽夫人の元を尋ねました。
華陽夫人「あら?これは高級な反物ではありませぬか?楚の国にいた頃、このような反物で拵えられた服を着ていたものだわ…」
呂不韋「ではこの反物で服を拵えますので異人殿を養子に迎えて下さりますか?」
華陽夫人は呂不韋が考えている事が
ただの人助けでない事を何となく感じてはおりましたが…
華陽夫人「分かりました、
王には私からお話致しましょう。」
こうして呂不韋の貢いだ服が華陽夫人に届けられ呂不韋と麗霞、異人は出世をするための糸口を掴みました。
異人「では…私は今から名前を子楚に改名し養母様に喜んで頂こう。」
異人は名前を華陽夫人の故郷である
楚に由来する子楚と改めました。
しかし…
孝文王は趙国への侵略行為を止めず
異人改め子楚とその妻・麗霞の身に
危険が迫っていました。
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