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新小学四年生
まだ一桁の年齢だった。
親に花見だと連れてこられただけなので、楽しく飲み食いする親やその友達と違い私は暇していた。
大人ばかりの集まりは気が引ける、何を話していいのか分からない。
それなのに母の友達は、自分たちだけ楽しんでいる罪悪感からなのか、社交辞令で話しを振る。
学校どう、お友達は、どんな子なの。知って楽しいか、興味ないくせに。
それが解るから黙っていたのに母からは、態度が悪いと怒られる。
遠くへ行かなければ、歩き回っても構わないと言ってもらえた。
私はさっさとその場を離れ、ひとりお花見を開始した。頭上には桜雲。
「それで、どこからやってきたの」
聞かれて振り返るまで、迷子の自覚はなかった。
荷物は全て母の隣りに置いていたから、誰も呼び出せない。
ここは広い公園で、辺り一面桜が綿雲のように開花する。
シートを敷いた花見客でごった返し、酒を呑む者、イチャつくものなど大賑わいの様相だ。
「出店の近くとか、池の近くとか」
私より少し年上そうな通りすがりのこのお兄さんは、私を心配してくれた。
太い道に近かった気もするが、見ればだいたいどのシートも道には接している。
「一緒に探そうか」
こんな感じで、お世話になった。
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