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「ね、明音。おばあちゃんが寂しがってるから、やっぱり二学期に合わせて引っ越そうと思ってるんだけど。お父さんを置いて」 お母さんからそう言われたのは、この土地に引っ越してきて一年ちょっと経った時だった。 おばあちゃんがおとなしく寂しがるわけない。きっと「いつ来るんだ!」とか言ったんだろう。つまり私が反対するとお母さんは板挟みになるわけだ。 最初から2年の予定でこちらに来ているのだ。それが少しだけ短くなっただけ。 「ん、わかった」 私は承諾した。だけど一つだけ条件がある。 「お母さん。学校に報告する時『終業式当日までは絶対に秘密にしてください』って言ってね」 「え、なんで?」 「なんででも!」 だって、二度と同じことは起こってほしくない。だけど、詩ちゃんと部活のときによく話す2人には自分から言いたいな。きっと3人なら秘密を守ってくれるから。 お母さんは担任に私の希望を伝えてくれた。「職員室には伝わるけど、生徒には秘密にする」と約束してくれたそうだ。よろしく頼むよ、先生たち。 まあ、裏切られても大丈夫だけど。また耐えるだけだ。
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