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私がみんなとちょっと違うと気づいたのは幼稚園の時だった。 私は、おとなしい性格と言われる。 『ようちえんにいきたくない』 幾度となく訴えたことがある。 クラスの皆が簡単にできることが私には難しかった。鉄棒とか、早く走ったり、大きな声で話したり。 幼稚園はなんだか漠然と居心地がよくないと思っていた。だから、登園しなくて済むように頑張って抵抗しようとした。 でも無理矢理バスに押し込まれて登園させられた。着いてしまえば自力で戻ることはできないし、それなりにやることもあったからなんとか過ごすことができた。 そんなある日ふと言ってみたことが、事の発端。 「あたまいたいから、ようちえんおやすみしたい」 お母さんは、何も疑わずに休ませてくれた。 今まで何回『ようちえんいきたくない』と言っても、聞いてもらえなかったのに。 嘘をついたのに、何も咎められたりしなかった。 本当は頭なんて痛くないのに『ずる休み』。私は、罪悪感で布団から出られずにじっとしていた。 いつの間にか眠っていて、目が覚めたのは午後だった。 ふと窓を覗くと同じ幼稚園から帰宅する子の姿が見える。頭が真っ白になった。 嘘をついた。幼稚園をサボった。 私は一気に2つも悪いことをしたのだ。 すごく後悔した。 簡単に「いきたくない」なんて言ったらいけなかったんだ。
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