出会い

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出会い

 東京都渋谷区渋谷――。  人が行き交うスクランブル交差点の上空、ビルの屋上で永禮(ながれ)大雅(たいが)はそびえ立つビル群の屋上が同じ高さにあるのをぼんやりと眺めていた。噴き上がる風で黒いTシャツが旗のようにはためいている。 「はあ……」  息を吐き、握った鍵を緑色に塗られたコンクリートの床に放つ。カチャ、と軽い音がした。  長い黒髪が四方に流れて視界が何度も遮られるが、構わず屋上の端に向かって柵越しに下を見る。  行き交う人、人、人……。言葉として捉えることのできない声や車の音、大型ビジョンに流れる放送、全てが喧噪だ。  一歩を踏み出し、185cmの身長を使って軽々と柵を越えると、こんな時に役立つ長い足を見て大雅は苦笑した。 「っっバッカやろ――――!!」  その時、誰もいないはずの屋上に耳をつんざく声が響く。  気付くと大雅の身体は背中から硬いコンクリートに打ち付けられ、2、30代くらいの男に黒いサングラス越しに睨まれていた。 「何してんだよ!!」  思い切り胸倉を掴まれて、ハイブランドのTシャツが伸び切っているのが目に入る。 「……いや、どこから湧いた? オッサン……」  茶色いパーマヘアを揺らすスーツ姿の男。間違いなく大雅の知人ではない。 「お前。下の階にいた女に何をした? そこに転がっている鍵を使って屋上に侵入したのか?」 「……めんどくさ……」  大雅は掴まれたまま長い溜息を吐きながら眉間に皺を寄せる。  スーツの男は手を放し、静かに大雅を見据えた。
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