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初仕事に向けて
大雅が古雑誌と古新聞をまとめ終え、デスクの上の書類を全てファイリングしたところで外出していた恭祐が戻ってきた。
「おおおお。掃除検定1級並みだな!」
「ありませんよ、そんな資格」
「あるんだよ、掃除能力検定っていうのがな」
「所長とは一生縁がなさそうな資格ですね」
軍手をしながら作業をしていた大雅は、久しぶりの肉体労働に軽く汗をかいている。髪は邪魔だったので後ろでまとめていた。
「うーん、いくら助手とはいえ、客前に出すとなったらジャケットは要るな。俺のを貸してもいいが……その髪もなあ……」
「客前?」
「明日、仕事に付いてきてもらおうかと思っている」
「はあ……」
大雅は探偵事務所の助手というのが何をするのか分かっていない。
「大丈夫だよ、身辺調査だから」
「何が大丈夫なんですか?」
「特別なカウンセリングがいる客じゃないってこと」
「カウンセリング……?」
大雅は軍手を外しながら、じっと恭祐の風貌を見る。
切れ長の目、いわゆる塩顔の恭祐は、鼻が高く唇が薄い。
パーマがかかった茶髪を見ていると、なんとなく「輩」っぽいなと大雅は思う。こんな風貌でもカウンセラーが務まるのだろうか。
「とりあえず、桂は髪を切ってもらうか……」
「いや、美容室は……」
「大丈夫だ。信頼できる男がやっている完全予約制の店に連れて行く」
「……」
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