96人が本棚に入れています
本棚に追加
探偵の仕事
朝から大きなオフィスビルの18階に来ていた。
大企業の「経営企画室」が客だという。探偵というのは一体どんな仕事をするのだろうか。買ったばかりの黒いスーツに袖を通し、別人になったようだ。大雅は不安になる。
「よろしくお願いします、犬山さん。室長の結城です。こちらは一緒に仕事をしている水沼です」
「本日は助手の桂も連れておりますが、まだ名刺を持たせておりませんのでご挨拶のみで失礼します」
「よろしくお願いします、桂さん」
恭祐は結城と名乗った40代くらいの厚みある体型の男性と名刺を交換し、水沼という30代くらいの眼鏡をかけて後ろで髪を束ねた女性社員と名刺交換をした。
大雅は本名が桂みたいじゃないかと焦りつつも、結城と水沼の名刺を受け取って恭祐の座った席の隣に座る。
「弊社の顧問弁護士より犬山さんを紹介いただきました。調査のスピードが迅速で、とても正確だとおうかがいしております」
「いや、あの羽田先生にそう言っていただけると大変ありがたいです。今回の件ですが、別の興信所にも専門調査の依頼はされておりますか?」
「ええ、コンプライアンス関係と与信調査は専門の調査会社に依頼済です。では、改めて与件をお伝えしましょうか」
本題を話し始めた結城に対し、恭祐はうなずきながら落ち着いていた。
「弊社は海外進出におけるノウハウがありませんので、『槇田コンサルティング』さんに間に入っていただこうという話が出ております。ですが、相手は経営者おひとりで仕事をされており、慎重にならざるを得なくてですね……。こうして、犬山さんをお呼びした次第です」
結城が『槇田コンサルティング』のパンフレットを恭祐の前にすっと差し出すと、恭祐は一度メガネのフレームを鼻の上で軽く持ち上げてパンフレットをパラパラとめくった。
最初のコメントを投稿しよう!