97人が本棚に入れています
本棚に追加
「ありがとうございます。私、その、まだ仕事中で……」
「うん。お仕事頑張って」
「お礼、しなきゃっ……」
「お礼?」
「あの、バイト終わるの20時なんですけどっ……」
たどたどしく誘う様子に、大雅は小さく笑う。
「じゃあ、お礼してもらっていい?」
「は、はい!」
「廃棄処分のお弁当、くれない?」
「え??」
「僕、財布忘れてケータイも調子悪くて、昼から何も食べてないんだ。捨てるお弁当、恵んでくれない?」
「いや、あの……廃棄のものは厳重に管理されていて……」
女性店員が申し訳なさそうに視線を落とすと、「そっか、それじゃ仕方ないね」と大雅は背を向けて歩き出す。
「あ、ちょっと待っていてください! 私が何か買って持ってきますので!」
慌てて走り去る足音を聞きながら、大雅は背を向けたまま口角を上げる。
夕陽を浴びて目が青白く光り始めていたが、この状態になればどんな相手が来ても怖くはなかった。
最初のコメントを投稿しよう!