二人の末裔

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「そのコンビニ店員に何をした?」 「お弁当をもらっただけです。……能力を使って」  ただ受け答えをしているだけなのに総毛だつ。  恐らくこれが恭祐の特殊能力なのだ。  明確な理由なく威圧される。敵わない、と本能が言っていた。 「今後、俺が許可するまで能力は使わないようにしろ。今回は夕食代を渡さずに行った俺のせいでもあるが」  恭祐がそう言うと、大雅は肩の力が入ったまま、車をマンションの入口からさほど離れていない場所で停めた。  夜の住宅街は静かで人の姿もない。 「車からマンションの入口を撮影する。俺たちはエンジンを切って後部座席に潜むぞ」 「……エンジンを切らなくちゃいけないんですか?」 「車のエンジン音がすれば、向こうは人目があると思って警戒するからな」  気迫に負けて大雅はエンジンを切る。冷房が切れた車内は途端にムワリと熱気がした。  言われるままに後部座席まで移動する。  辺りが暗いため、外灯に照らされたマンションは入口が良く見えていた。  息を潜めてターゲットの到着を待っていると、静かな車内に二人の息づかいだけが響く。  なんとなく鼻で息をしていた大雅は、先ほど食べた揚げ物の匂いが残っているのを気にしながら恭祐を盗み見た。 「それなりに衝撃的な光景を見ることになるだろうから、声を上げない心づもりをしておけ」 「なんですか、それ……なら、何が見られるか先に教えてくださいよ」  大雅は引きつった顔で静かに言う。  先ほどまでは恭祐を魅了して弱味を握ってやろうと思っていたのだが、すっかり計画が狂ってしまった。  肌にビリビリと得体のしれない力を感じる。恭祐は一体何者なのだろう。
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