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「ターゲットが女連れでマンションに帰ってくる。その徹底的な瞬間をカメラに収めるぞ」
「女性……はい」
交際相手がいるのなら、共にマンションに帰ってくることもあるだろう。
そんなことまで盗撮されて報告されてしまうなんて、と大雅はうすら寒い心地がした。
通りの向こうから、人が歩いてくる気配がする。
暗くてよく見えないが、確かに二人いるようだ。
マンションに入る瞬間、明かりに照らされてその姿がハッキリと全貌を現す。
「――――!!」
大雅は声にならない声を上げそうになり、慌てて口を手で覆った。
ーーそんな、なんで……。
大雅は言葉を失う。二人が建物に消えて行くと、恭祐は「行くぞ」と小さく呟いて車外に大雅を誘った。
「あの、所長……なんであの人が……」
「それを探るのが仕事だ。いいか、変な感情は捨てろ」
足音を立てずに恭祐が路地を歩いて行く。
マンションを見上げると、ちょうど槇田の部屋に明かりが付いたところだった。
「20時46分。ターゲット槇田浩介、水沼メイと共に自宅マンションに帰宅。二人は肩が触れ合う距離で最寄駅から歩いてきた。待ち合わせは京浜東北線、品川駅ホーム。ターゲットとの接触は20時ちょうど」
恭祐は携帯電話のボイスレコーダーに事実を録音する。
水沼メイーー午前中に打ち合わせをしたばかりの、依頼元である経営企画室の女性だった。
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