女性を魅了するだけの簡単なお仕事

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女性を魅了するだけの簡単なお仕事

 水沼を目撃すると、恭祐は一旦事務所に戻ることを決めた。  槇田の自宅マンションで張り込みをする予定だったのを切り上げ、水沼に対する調査に切り替えるためだ。  大雅は作業着からスーツに着替え、恭祐の車の助手席に座っている。 「あの、どういうことなんですか……? 水沼さんが、どうして……」 「恐らく、水沼という女が槇田浩介と内通している。社内の情報や有利になることを伝えているとか、そんなとこだろう」 「でも、僕らは調査結果を経営企画室に報告するんですよね……? 水沼さんはどうなるんですか?」 「そりゃ、会社の判断によるだろ」  夜の高速道路をシルバーグレーのBMVが走り抜けていく。  トラックを縫うように抜きながら、先を急いだ。  高速道路とはいえ辺りは暗く、恭祐は裸眼だ。  先ほどは髪型を無造作にしていたのが、かっちりと固めたスタイルになっていた。 「槇田が故意的に水沼に近づいたのか、もともと旧知の中だったのか、真相は分からない。水沼は探偵を雇ったことを槇田に伝えるだろうから、この先は尾行もやりにくくなるはずだ」  車を追い抜きながら、恭祐の目が金色に光る。
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