女性を魅了するだけの簡単なお仕事

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 恭祐はBlootooth接続で携帯電話と同期された車のスピーカーで、音声入力をして結城に電話をかけた。  大企業は夜の電話対応などしないのかと思えば、3コール目で電話は繋がる。 『はい、結城です』 「どうも、不忍(しのばずの)探偵事務所、犬山です」 『お世話になります。どうかされましたか?』 「ええ、実は――結城さんにだけお伝えしておきますが、恐らく御社内で槇田浩介さんに通じている方がいらっしゃるようです。槇田さんは探偵の存在を知ってしまったようなので、暫く張り込みや尾行は控えた方が良いかなと。代わりに、社内の聞き込みに許可をいただきたいのですが」 『……ああ、そうだったんですか……。僕の一存で許可を出すことはできませんが、どういったことにご協力したら良いでしょうか?』 「うちの(カツラ)を、会社のお嬢さん方とランチに行かせていただくのではいかがですか?」  ――いや、なんで僕が?!    大雅は反抗的な目線を恭祐に送るが、ニヤリと笑われてカチンとくる。 『ああ、爽やかな助手の方ですか。彼は女性の好感度が高そうですね』 「聞き込みと言うと警戒されてしまうので、社内の声をざっくばらんに聞かせて欲しい、という体で(カツラ)を潜り込ませます。警戒心を持たせない自信ならありますので」  ハンドルを握りながらにこやかに営業トークを繰り広げる恭祐に、大雅は「自信なんてありません」と口パクで抗議するが全く相手にされない。
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