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「ひとつ確認しておきたいんですけど。所長の能力って何なんですか? あと、『末裔』って一体……」
「『不忍奇譚』って分かるか?」
「いえ。何ですかそれ」
「人ならざる力を持つ、妖怪と人の混血種が出てくる江戸時代後期の資料を基に作られたマイナーな物語だ。大正時代に誰かによって書かれたんだが」
「作り話ってことですよね?」
「でも、それがどうやら作り話の体裁を取った末裔の記録だった可能性が高くてな。犬山家の蔵で全部を読んで、他の末裔の家にも同じ本があるんじゃないかとか、そんなことを思ってた。うちは『人狼』の末裔なんだ。お前は『桂男』の末裔に違いない」
「僕は初耳です。まあ、家族らしい家族もいないので分かりませんが」
「そうか。きっと桂の親のどちらかが、桂男の血を引いているはずだ」
現実離れしたことを真面目に言われ、大雅は小さく笑ってしまう。
桂男の血を引いているなど、これまで身の回りで聞いたことがない。
「そんな変な話、信じようにも信じられません。なんで僕が末裔だと分かるんですか?」
「末裔の匂いがする」
「匂い……」
ーーそんなこと言われても。
恭祐の言っていることは、ときどき大雅の理解を超える。
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