女性を魅了するだけの簡単なお仕事

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 ボロボロと大粒の涙が溢れ出す。  この世界は、誰も助けてくれない。誰も理解してくれないと思っていた。  恭佑は大雅の隣まで歩いてくる。 「まあ、さ、俺はきっと(カツラ)がいてくれたらすげー助かると思うんだ。家事は全くできないし、女と仲良くなるとか連絡先を交換して連絡を取り合うとか、苦手中の苦手だし」 「でも、それ以上に迷惑をかけるかもしれません」 「うん。まあ、想定内だよ。人と違うってことは、工夫して生きなきゃいけない。探偵として影の存在になって、人間を暴くようなことやってりゃ、ああ世の中こんなもんかって笑えるぜ?」  そう言うと、恭祐は大雅の頭をガシガシとかき混ぜるようにする。  髪がボサボサになり、こんなに荒っぽく扱われるのは初めてかもしれないと大雅は戸惑った。 「所長も、僕を利用するために呼んだんですよね?」  どんなに親切にされても、間違ってはいけない、と大雅は思う。  利用価値があるから置いてもらえているだけだ。 「馬鹿言うな。利用じゃねえ、雇用だよ」 「違いが分かりません」 「活躍を期待してる、ってこと。運命共同体としてお前を育てる覚悟だぞ、こっちは」  ニヤリ、と笑った恭祐の笑顔には、やはり犬歯の鋭さが目立った。  大雅が生きてきて初めて出会った、自分の能力が通じない存在ーー。
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