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「水沼さんが兄をかっこいいと言ってくれたと知ったら、喜ぶと思いますよ。なにしろ、兄は男にばかりモテる人で」
電話の向こうで舌打ちでもしていそうだなと思いながら、大雅は恭祐に次の指示を仰いだ方が良いだろうかと考える。
当初の予定では水沼と仲良くなれば良かったが、このままでは大雅のアイドル時代を根掘り葉掘り聞かれる時間になってしまいそうだ。
確かに仲は良くなるだろうが、槇田が完全に蚊帳の外だ。水沼のオタク度合いを知っても何もならない。
「男の人にモテる、か。なんか分かる気がします。あの、永禮くんは相当女性にモテると思うんですけど、彼女さんとかいるんですか?」
ーーいや、ほんとなにを聞いてくれるんだよ。
「……いいえ。そういう水沼さんは、彼氏いるんですか?」
なんだかなあ、と思いながら、ずず、と目の前にある残り少ないアイスティーをストローで吸ってから大雅は尋ねた。
「……多分」
複雑な表情を浮かべた水沼に、来た! と背筋を伸ばす。
「え? 多分って? 水沼さん、なにか事情でもあるんですか?」
相手は槇田なのだろうか。大雅は声に少しだけ色気を混ぜて尋ねてみた。
目の前の水沼はうっとりと大雅を見つめ、「やだなぁ、永禮くんに聞かせるような話じゃないですよ」と顔を高潮させる。
「僕、話くらいなら聞きますよ? 水沼さん……メイさん、話してください」
そこで真剣な表情に切り替えた。
水沼は「ズルいなぁ永禮くん。そんな風に言われたら、頼りたくなっちゃう」と大雅をじっと見つめている。
ーーかかった。
大雅は唾をごくりと飲む。
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